「くだらない」 <ラブライブ!スーパースター!! 2期 第6話「DEKKAIDOW!」 感想>
また一言感想を述べたくなって筆を執りました。
夏美は自分のためだけに Liella! を利用しようといろいろ画策していましたね。6 話に入っても前半までは一貫して同じ姿勢です。お金儲けのため、手元のネタをいかに効率よく料理するか考えるばかり。
そこには行為の善・悪という考えが希薄だったように思います。
一応、一方的に利用している後ろめたさくらいはあったのかな。お金稼ぎが目的だとバレそうになると懸命にごまかしていましたから。*1
ともあれ、彼女の中にあったのは、どれくらいの数が稼げるかという思いがほとんどだっのだろうと。私はそう読みました。
Liella! に対しては、良くも悪くも「たまたま見つけた稼ぎのネタ」以上の思いはなかったのでしょう。手近にあるから利用しているけれども、別段ハナから食い物にしてやろうって考えて近づくほど悪どい感じではありませんでしたから。かといって 8 人の活動に興味があったようにも見えません。無関心と表現するのがいいのかな。
関心がないから、タブン自分のやろうとすることの結果を想像できなかった(しなかった)んだろうなあと思ったのですよ。
彼女のやっていたことに関してですが、動画を編集してアップする手間賃としてお小遣いを稼ぐくらいだったら、咎め立てられるほどのことではないかもしれません。*2 ですがそれは Liella! にもメリットがある場合の話です。センセーショナルなほうが再生数を稼げるからと、彼女らのイメージを毀損する嘘を盛り込むのはさすがにいけない。
でも夏美は何とも思っていなさそうなんですよね。思っていないというのともちょっと違うか。考えが至っていない。その動画をファンがどんな気持ちで見るかだとか、そのことで Liella! の活動にどう影響が出るかだとか、Liella! 側から見た先をまったく考えてなさそうでした。
このあたりの機微が少し不思議なんです。褒められた好意じゃないのをわかった上でやってて、「騙される方が悪い」とか開き直るのならまだ理解もできるんですが、考えていないというのは。
多分、Liella! の活動は把握していても、彼女の認識は至極表面的だったのだろうと思います。グループの活動の意味、例えば 2 年生 5 人がそれまでの一年間で何を示そうとしてきたのかだとか、1 年生たち 3 人は何を思って加わったのだとかを理解しようとしていなかった。
彼女頭はすごく良さそうなので、その気になればちゃんと思い至ってたと思うんですけどね。この時点ではそういった方面へ意識を向かわせていなかったんでしょう。
だから、(未遂に終わりましたが)あんな酷いコトが平気でできたのだろうと思うのです。
そんな彼女が変わります。きな子ちゃんと話をしたことで。
きな子ちゃんから 1 年生の夢の話を聞き、そのとき初めて同級生たちが、ひいては Liella! がやっていることを理解したのだろうと思います。そして自分の夢が何なのかと聞かれて、自分が大事にしているもの、マニーについて考えを巡らす。
お金は何かを成すための手段です。そのものが目的になることは本来ありえません。だからきな子ちゃんからは当たり前のように「なんで?」と問われていました。でも夏美はその答えを持ち合わせていない。
夢がないからとお金稼ぎに精を出すようになった経緯を考えれば当然ですよね。手段であるべきお金を夢の代替としているだけなのだから、その先の目的なんてあるわけがありません。
まあ、お金を稼ぐのだって大変なことです。エネルギーはすごく使うし、センスや工夫も必要になるし、上手くいくことのほうが少ない。でもやった分は何かしら返ってきます。数字でちゃんと現れてくれます。荒唐無稽な夢を夢見続けるよりは確実に手応えを感じられるのでしょう。夏美が懸命にやっていたのはある意味評価しますが……。
手段を目的化してしまうと大抵おかしなことになりますよね。行く先もないのに車を運転するようなもので、そこで速度を出すことを目的だと勘違いすれば、そりゃ何も考えずアクセルをベタ踏みしだすでしょう。夏美が Liella! を利用してたあたりの動きって、それだったのかなあと思うのです。
で、きな子ちゃんと話をして。夢というものや、自分が今やっていることについて考え直させられて。
- 夏美
- まったく……、くだらないんですの
この「くだらない」って、まさかきな子ちゃんが語っていた 1 年生の夢の話じゃないでしょう。もちろん自らに対してです。夢と呼べるものがない自分。その埋め合わせにお金を稼いでいること。他人を利用しようとしている現在。
忘れていたのか、わざと気づかないふりをしていたのかわかりませんが、夢を語り夢を尋ねてきた同級生のせいで、いえ、その同級生のおかげで今一度自分を見つめ直すことになりました。
夢を持って努力しようとする同級生たちがいる。それに引き換え目的もなく走り続ける自分は虚しく映るでしょうね。
上記のセリフは、小手先のごまかしでほんのちょっとの数を稼ぐことの無意味さを自覚したからだと思うのです。馬鹿らしくなって、動画の釣りサムネを適正なものへ変更したと。
しかし、自分が大事にやってきたことを虚しいと認めて「くだらない」と言い切るのってなかなかに難しいことだろうと思います。
それだけ彼女の中に起こった意識の変化が大きかったということ。そしてここで Liella! に対する無関心が、夢を持つ人たちという認識へと変わったからこそ、続く場面の、凹んでいた同級生の叱咤へつながっていったのだろうなと、そんなことを思ったのです。