波の干渉 <ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2期 第2話「重なる色」感想>

第 2 話はエマちゃん大奮闘でしたね。1 期 5 話お当番回でも同じように思いましたが、彼女は誰かのために一生懸命になっている姿がホント素敵です。そばにいる誰かの心をぽかぽかにさせてくれるアイドル。私もこんな親身に寄り添ってくれるお姉さんが欲しかったなあ。

この 4 人である必要性?

今回のお話はなぜ QU4RTZ 4 人で進行したのでしょう。ミモフタモナイ言い方をすると、ユニットありきの話だからの一言で済んでしまいますし、ストーリーの中ではただの偶然で済まされていましたが。笑 せっかくなので一つ屁理屈をこねてみようと思います。

まずお話の軸になっている嵐珠は、同好会に相対する存在として据えられています。キーとなるのがそのアイドル的スタンスで、「個としての立脚」、「何も求めない」とかそんなところ。ステージの上で表現することで力を示し、与えるだけ与えて返ってくるものには期待をしない。むしろ受け取ることはマイナスになると考えている。

同好会がその逆を行くとなると、強調すべきはもちろんファンから返ってくる応援を取り込んでいる点でしょう。

あるのは「自己表現のみの嵐珠」 v.s. 「ファン(他者)とのつながりも含む同好会」*1 という構図です。

そこでです。同好会の活動を「自己表現-つながり」の対になる項目軸で見た場合、この 4 人はステージに立つ理由が比較的後者重視のメンバーと言えるんじゃないかと思うのです。

エマちゃんは前述の通りですし、璃奈ちゃんは言わずもがな「つながる」を前面に押し出しています。かすみんが可愛いを発信するのは一つには称賛を求めるから。彼方ちゃんは、ちょっと迷うのですが、ステージ作りが特徴的で、客席含めて全体を巻き込もうとしていることを思うとこっち寄りかなあと。

本来なら愛さんも in なのですが、彼女の場合、第 1 話の最後で嵐珠に売られていた挑戦を面白がって買ってるんですよね。フェスで対バン(?)できることを楽しみに、嵐珠を好敵手だと見ている様子です。だとすると今回の話の流れには乗りにくんじゃないかな、と考える次第です。……無理がありますかね?*2

ともあれ、交流を重視するメンバー 4 人。他者との関わりを排除して考えている嵐珠にぶつけるには、なかなかいい人選だと思うのですよ。*3

ミアちゃん、栞子さんの立ち位置

また、今回のお話では 2 期になって登場したミアちゃん、栞子さんの様子が少し描かれていました。

ミアちゃんが目立つのは才能の特質性と素っ気ない性格ですが、それだけじゃない面も垣間見えたように思います。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より
ミア
Hey, kitty.
ほら、怖くないよ

同じように高い才能を備えた女の子でも、陰のなかに登場するミアちゃんは嵐珠とは対照的に映ります。

校内で一猫(ひとり)悠々とお散歩役員の仕事に勤しむはんぺんに、彼女は何を思って話しかけたんでしょうね。はんぺんは見慣れない人間を怪訝そうに観察していただけだと思うのですが、ミアちゃんは怯えさせてしまったと感じたのかな?

「怖くないよ」はごく普通の言葉だと考えられなくもないですが、ここに彼女が周りに築いている壁のようなものが透けて見えるような、見えないような。そんな気がします。はんぺんの気持ちをそう推察したってことは、彼女にとって周りの人間は怖い存在なのかなあとか。考えすぎでしょうか。

栞子さんは精力的に働いていましたね。前回はオープンキャンパスの実行委員会でしたっけ。で、今度は文化祭実行委員ですか? その原動力がどこにあるかはわかりませんけれども、人のために尽くす様子が見て取れました。

二人は今の筋からは外れているので、本当にまだ顔見せ程度です。でも上手いなと思ったのが、両者のついでにしっかり嵐珠の描写が補強されていたことでしょうか。

ミアちゃんとはビジネスライクな付き合い、というよりはもっとドライでお互いに利用し合うだけの存在のようですね。

栞子さんは幼馴染との説明がありましたが、嵐珠は(頼って日本にやって来ておきながら)始めたアイドル活動を彼女に見せようとはしてないのですよね。ここでは、栞子さんを次のライブに誘う歩夢が印象的に映りました。嵐珠と同好会との違いがこんなところにも現れています。

そう考えると、愛さんがミアちゃんにはんぺんの餌やりを誘っていたのも、嵐珠との差異なのかもしれませんね。

嵐珠は独りで立とうとしてて、実際にできてもいるのかな。一番近いと思える二人からもかなりの距離を取ってやっていますものね。孤立しているのとは毛色が違いますが、独りなのはやっぱり寂しく思えるかもしれません。私が同好会目線だからかなあ。

嵐珠のお家のシーンでは、エマちゃんがトレーニングメニューを見つめていましたよね。独り黙々とこなしているランジュちゃんの様子を想像していたんじゃないかと思うのです。

振り子の同期

他にもお家のシーンで述べたいことはあるのですが、ヒートアップするショウ・ランジュと 3 人との口論についていけず一人おろおろしていた贔屓が相変わらす可愛いとか、そんな話に始終してしまいそうなので端折りまして。後半のシーンに飛びましょう。

QU4RTZ といえばブランコが付き物(?)です。今回の話でも象徴的に使われていました。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

件のシーンで 4 人の漕ぐ振りが同期したのは、皆の気持ちが一緒になったから? さすがにこれは演出の狙いすぎじゃないかと思います。笑

それでも私は、振りが揃ったのが偶然じゃないところに意味を見出したいと思うんです。

振り子の共振はよく知られた話です。長さが同じ振り子を二つ、一本の棒に並べて下げて片方だけ揺らすと、その振動がもう一方の振り子に伝わり、そちらも同じように揺れ始めます。

このシーンのブランコは、複数の振り子が同時に、バラバラに揺れ始めたパターンと言えます。モノがちょっと変わるのですが、メトロノームではとても面白い現象が見られまして――。

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揺れる台の上に多数のメトロノームを並べ、それぞれを適当に動かすんだそうです。そうするといつの間にか振りが同期してしまうのだとか。不思議ですね。お互いを励振しあう(揺らしあう)ことで個々の位相(振りのズレ)が少しずつ矯正され、最終的にすべてのメトロノームが同じタイミングで頭を振ることになるようです。

もちろんブランコではこんな現象は起こり得ないでしょう。ですが今回の話を見て、すぐにこの実験を連想してしまいました。

公園のシーン、最後には彼女たちの思いが一致しましたが、それはただの偶然ではありません。

4 人ともそれぞれに考えていることがあって、最初の段階では意見としてまとまっていませんでした。話し合っているうちに、お互いの思いが影響しあい、少しずつ意見の方向が定まる過程がそこにはあるんです。そしてびたっと一つの思いに至る。

意見が自然とまとまっていく様子を「励振しあうブランコの振り」になぞらえることができるのかなって。なんだか美しいなと思ったのです。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

また、深掘りする話題じゃないので一言で終わらせますが、同じく QU4RTZ に付き物のコーラスも音波の干渉現象ですから振動に関わる話ですね。ブランコから練習場面へ、直にシーンが切り替わったのは連想がはたらいて好きです。

嵐珠への挑戦

さて、どういう形で嵐珠に答えを叩きつけるか、彼女たちのやることは決まったみたいです。嵐珠には出向いてもらわなくちゃいけませんから、その連絡を……って掲示物に私信*4 とはずいぶん迂遠な手段を取りますね。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

栞子さんあたりを捕まえて聞けば連絡先は手に入るでしょう。電話なりメッセアプリなりで直接伝えれば確実なのに。それをしないのですね。

ポスターを張り出す時一緒にメッセージを添えたのならまだ分からなくもないかなあ。ですが実際は日を空けて後で追加してますから、もっと確実性に欠けます。

嵐珠がすでにポスターを見ていた場合、内容を把握しているからと以降は注視しなければ、多分このメッセージには気づかないと思うんです。その可能性をエマちゃんは考慮しなかったのでしょうか。

きっとランジュちゃんが見てくれると信じてた。いや、むしろ知っていたんじゃないか。私はそう思います。

エマちゃんが、そして最終的には 4 人がおせっかいを焼こうとするのは、嵐珠のコトバに嘘があるように思えるからです。引っかかる点は数あるでしょうけれど、まず最初にあるのは、彼女が自分たち同好会のことをとても気にしているということ。

そのやり方を情けない(だから一緒にはやれない)と本気で思うのなら、もう同好会なんて気にもとめないはずなんです。それが、どー見たってまだ気にしているように思えて仕方がない。エマちゃんも言っていたように、嵐珠の出発点からして同好会のフェスですものね。

この「気にしているっぽい」を根拠に、エマちゃんはお節介を焼こうと決めたわけです。

もしここが間違っているなら、疑ってる嵐珠の本音なんてものは存在しないことになるのかな。少なくとも 4 人がやろうとしていることは崩れてしまいます。逆に推測が正しければ、そこを突くことで本音を引き出すきっかけにできると。ということはその答え合わせが、嵐珠が向き合ってくれるかどうかのリトマス試験紙になるはずですよね。

彼女らは、ポスターに張り出すだけという確実性に欠けた連絡方法を取りました。これってちょうどこの試験紙に当たるじゃないかと思うんです。

嵐珠がメモに気づかなければどの道それまでですが……。エマちゃんたちは「嵐珠が同好会を気にしている」前提の上で動いています。ってことは、ランジュちゃんは何度だってポスターを眺めてくれる「はず」なんです。「気になってるグループ」のイベントってすごくワクワクしますものね。告知を一度見てフーンで終わり、なんてことにはならないでしょう。

ランジュちゃんは「きっと」見てくれるのだから、一見不確実なこんな方法で十分なのです。

いえ、考えてみれば何もしなくても彼女は合同ライブを見に来てくれるはずなのだから、メモを残す必要もないのかも。あえて不確実な方法をとっていることこそが、嵐珠に対する挑戦と言えるかもしれません。「私たち、知ってるよ」というメッセージですね。

はたして嵐珠がこのメモに気づいたということは、エマちゃんの推測が当たっていたと証明されたわけで、もう嵐珠が負けかけているように思えます。この孤高のアイドルはメモを手に取り微笑んでいましたけれども、その事実に気づいているのかなあ、なんてことを考えた第 2 話でした。

そう言えば、嵐珠は同好会のやり方を否定してはいますが、同好会そのもの——メンバーだとかパフォーマンスだとか——をダメだとは言っていないんですよ。ここにもちょっとした違和感がありますね。彼女の中で整合性がどうなっているのかも気になるところです。

今週の二番贔屓

最後に一つ。個別事情なので本筋とはまったく関係ないのですが、これは拾わざるをえないですっ!

公園のシーンでかすみんがちょっとイイコトを言ったのを受けて、璃奈ちゃんがすべり台すべり下りてエマちゃんに抱きつきに行ったんですよ!?

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

かすみんの言う、いろんなアイドルが居られる場所というのはニジガク同好会の強みの一つです。嵐珠ホームでも話していたように、同好会は璃奈ちゃんにとって自分と自分のやり方を肯定してくれる場所でしょう。かすみちゃんの言葉にはもちろん賛成です。

ですが他の二人が同意の返事をしたのとは違って口で言わず、ただひっつきに行ったんですよねえ。

感情がなんとなく言葉にならなくて、でもそれを表したい時ってあります。抱きついて甘えることで伝えたいのは、嬉しさだとか感謝だとか、場合によっては寂しさだとかでしょうか。この場合の璃奈ちゃんは同意と嬉しさあたりを表したいのかな。

で、言葉にしなくとも気持ちが伝わるとわかってるのが、なんだか嬉しくってですね……。

思いが伝わらないことをずっと不安がっていた少女とは思えないですよね。この娘、ほんの数ヶ月前までは伝えたい言葉さえも飲み込んでいたんですよ。それが今は逆に言葉を必要としないとは。

それだけ同好会の皆んなとの結びつきが強くなっているってことでしょうし、あえて上からの物言いをしますが、こういった成功体験が璃奈ちゃんの更なる前進に繋がって行ってくれるのだろうと、私は期待するんです。

頑張ってるなあ。

*1:同好会側で物語を見ているので、嵐珠に対して表現がキツめになっているのは容赦してください。

*2:実は彼方ちゃんも挑戦を買っているので、この論理展開には確実に無理があります。彼方ちゃんって実は色々見ていて気を使う性格だから、嵐珠におせっかいを焼きにいく話と親和性が高いとは思いますが。

*3:「理屈と膏薬はどこへでも付く」とはよく言ったものですね。笑

*4:かじられた食パン型の付箋も、添えられたイラストもかわいい!