蝶を感じる <未来予報ハレルヤ! (Eng Sub)>

ラブライブ!公式 YouTube チャンネルで、アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」の OP、ED、挿入歌の英語字幕版が公開されていました。

そのうちの一つ、『未来予報ハレルヤ!』で気になった英訳表現があったので、メモ代わりに残しておきたいと思います。

交差点 はしゃぐ風
The wind playfully blows through the intersection
スカートひらり踊る
And my skirt dances along with it
そのたび ときめいて
Each time, I feel butterflies

交差点とは、多分ここでは人々が行き交う場所のことを意味するのかな。そこを抜ける風を「はしゃぐ」playfully と表現したり、揺れるスカートを「踊る」dances としたり、いいですよね。思い切って一歩を踏み出すにあたって、その先には楽しいこと・ワクワクすることが待っていると予感させる、期待に溢れた軽やかな歌詞だなと思うんです。

問題はその胸の高鳴りを歌う「ときめいて」。英訳の “feel butterflies” を見たとき、頭の中に大きなハテナが浮かびました。

butterfly は feel の他にも have や get を伴い、"feel butterflies (in one's stomach)" の形で、一般に「緊張や不安で落ち着かない様子」を表します。精神が身体に影響を及ぼすのはよくあることです。一時的なストレスから受ける胃の不快感を、英語では「お腹のなかに蝶がいる」と表現するんですよね。面白い。

で、この "feel butterflies" を辞書で逆引くと、やはりどれも緊張、不安や nervous と、ネガティブなイメージでしか出ていないんですよね。だから私は、この英訳が歌っている状況にあまりそぐわないんじゃないかと思ったんです。新しいことを始めるのですから、緊張や不安もあるでしょうけど、その "どきどき" と「ときめ」く胸の高鳴りはまた別のモノじゃないかと。それで悩んでいたんですが……。

やっとわかりました。こういった辞書どおりの意味ではおかしいなと感じたときに頼りになるのは、やっぱり Urban Dictionary さんです!

同じ「落ち着かない様子」を表現するのでも、辞書にあるようなネガティブ方面でだけでなく、実際にはポジティブな方にも使うんですね。少しずつニュアンスの違った説明がなされていますが、目につくのは「憧れの人」「好きな人」といった単語です。大好きな人が近くにいたり、その人を思ったりするときの胸のドキドキを butterflies で表すと。なるほど。

『未来予報ハレルヤ!』は新しい一歩を踏み出す様子を歌った歌です。くじけて一度は諦めかけていたけれど、大好きを捨てることなんてできず、やっぱりその道へ進んでいこうとする歌。

捨てきれなかった「私の大好き」へのおもいは、きっととても大きかったはずです。むしろ、抑え込んでいた間に、憧れはより募っていたんじゃないかとも想像します。

ここで歌っているのは、憧れに再会できたことへの高揚もあるのでしょう。ずっとおもい続けていたモノを、やっぱり追い続けていいんだよとなったとき、ふわふわする感じにおおわれる。それを、恋い焦がれる人物を目の前にしたときの表現 "feel butterflies" を用いて訳と成すのって、なんだか素敵ですね。

いやあ、変に感じたことをそのままにして諦めなくってよかった。翻訳は解釈の一つにすぎず、そこから何かを思うことは二次解釈ではありますけど、それでもその 2 語から広がる世界は美しく思いました。正しいと思われる反訳を見つけたとき頭のモヤがすっと晴れた気がしたんですよね。その感覚もあいまって、一気に好きになった英訳です。