みずから信じること <ラブライブ!スーパースター!! 第6話「夢見ていた」感想>

千砂都ちゃん、あなたもですか。

それが第 6 話を見終わった感想です。対かのんちゃんに関してなら、今回のお話は期待に応えてくれました。一方で、同じくらい期待していた彼女のダンスに掛けるおもいと、また、その二つを踏まえた上でどうスクールアイドルに関わりたいかの話がごっそりと抜けていて、盛大な肩透かしを食らった気分です。特に後者に関して言えば、明確な目的意識のないまま*1 アイドルを始めるのが 3 人目になるわけで、冒頭のセリフも呟きたくなります。

いくつかのシーンをピックアップした、テキトーなコメントは以下のリンクです。

自身を持てるように

今回は気弱で一人では何もできなかった女の子が自信を持てるようになるまでのお話でしょうか。

幼少期に出会った女の子に助けられ、憧れて、その娘の隣に並び立てるようになりたいと願った。努力を続けて成長し、一人で立てるかを試そうとした今そのとき、支えてもらえることにやっぱり安心を覚えてしまう。

これじゃ駄目だと嘆く彼女に、幼馴染は私も支えられてきたと告げるわけですね。相手を助けられるようになりたいと願ってちぃちゃんが決意したあの日、かのんちゃんの方も感銘を受け、その頑張る姿に奮起を促されてきたと。

なんのことはない、最初から並び立てていたんです。ですが、なろうとするための努力は不可欠ですし、それがどう自信につながるかはまた別の問題でしょう。

「自分で決めたこと」、「自分で思えるまで」、「自分に自信を持てるように」。何かを課するのも、判定するのも、目的も、一貫して自分が主体でしたものね。今回はちぃちゃんの一人相撲*2 の結末を描くお話でした。

出典|アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第6話

「怯えてた」と彼女が言う物語の起点からしてそうなんですよね。何かから逃げようとしている画は彼女の心をよく表していたと思います。このシーンに切り替わったときには、怯えをもたらすその「何か」はもう描かれていないんですよ。ここで彼女を追うものはいない。一人で逃げているだけ。転けて泣くのだって、いわば彼女が一人で勝手にやったことでした。

つまり弱さを感じていたのは「勝手に」。ですから、それに打ち克って憧れの人と並べるようになったと、そう判断できるのも自身でないといけないのは道理ですね。

第 1 話の時点で、彼女はとっくに一人立ちできているように思えますが、周りからの判断では本人が納得できない。内だけで抱えている問題の難しいところなのかもしれません。他の誰か、たとえば事情を知った恋ちゃんが、あなたは十分やれていると伝えたところで聞き入れられないでしょう。

自身以外の声が届くとするなら憧れの人のものだけですね。ずっと目指して走り続けていて、まだ先にあると思っているところから掛かる声だから、ちぃちゃんは耳を傾けようとします。

実際には、お互いを先に見ながらも、二人は隣に並んで走ってきたわけで――。だから、今回のお話は二人で確認し合うことこそが本命なのでしょう。大会で勝つことは付属品でしたね。

不満点

ところで今回のエピソードには不満点がいくつかあります。迷いましたがそれらを記しておくことにします。

ダンスってなんなんだろ

まずちぃちゃんにとってのダンスが何なのかよくわからなくなった話から。

ダンスはかのんちゃんの歌に対するカウンターパートなんですよね? 最初から対比して描かれていましたし、回想では「かのんちゃんの歌みたいに大好きで夢中になれるもの」とはっきり言及されていました。

ここでわざわざ「歌みたいに」と断るからには、かのんちゃんの歌へのおもいを聞いて感じ入ったものが彼女にはあるはずなのです。たとえばパフォーマンスで周りの人を楽しませるのが嬉しいとか、他のことが気にならなくなるほど没頭するのが心地よいとか、できることが増えるとより面白くなるとか。そんな感じに「私の中にもあったら良い」と思える要素を、かのんちゃんの話の中に見たはずなのです。それがそのセリフに繋がってくるのですから。

なのに決意に至るまでの様子が示されてないのですよね。これでは、彼女が自分とかのんちゃんのどこを重ねてダンスを選び、続けていこうとしたのかが見えてきません。

彼女の中に最初からダンスがあったのではありませんよね。ここがかのんちゃんと違う点です。意識して見つけに行ったモノ、それがダンス。であるなら、何を求めて選択するに至ったかは外せない話です。「大好きで夢中になれるもの」の根底に関わる話だと思うんですよね。ここのオモリを抜いてしまうと、ちぃちゃんの中のダンスがボヤケるように思います。

音楽科をあっさり辞めてしまった件については、まあ、うん。指摘したいのは同じことになりますから省略で。

ちぃちゃんにとってダンスがその程度であるというなら、それはそれで構わないと思うのですが、当然、対比に出されていた歌も扱いが軽くなってしまうわけで……。いいのかしら。

課した大会優勝

成長の判断基準として今回の大会を選ぶ理由が見えません。

公的な場で評価されることは一つの指標になりえます。何かを一人で成し遂げるのが彼女の目標でしたものね。自信の拠り所とするには悪くない。でもそれがなぜ今回の大会なのでしょう。

かのん可可がデュオを組んでからなら最低 3 ヶ月は経っているはずです。*3 その間ちーちゃん何考えてたんだろ? それ以前もあります。中学まではかのんちゃんがあまり上手くいっていない一方で、彼女は少なくともそれなりの成績を示していたはずなんですが、それをどう思っていたかは気になります。

ダンス大会も、これが自分から求めにいったのなら理解も示せますが、向こうから降ってきたものなんですよね。大事な判断を賭けるもののはずなのに、「たまたまそこにあったから」にしか見えないのでは残念が過ぎます。

勝てばそれでいいのか

優勝を機に音楽科を辞める、と。もちろん本人にはれっきとした理由があります。究極的にはしたいようにするのが一番だと思うので、周りがとやかく言えるものではありません。しかし、だから何をやるのも完全に自由なのかといえば、そこには異議を申し立てたいところです。

勝負事には勝者だけじゃなく敗者も存在します。勝った人間には、負けた者の上に立つ、ある種の責任が生じると思うんですよね。勝って満足したから「もういいや」と投げ捨ててしまっては、打ち負かした相手に非礼ではないかと。全員がかどうかはわかりませんが、参加者はダンスに対して真摯に向き合っているのですから。*4

大会はそれだけで完結しているのでメクジラを立てる程ではありませんが、音楽科の方は大問題だと思います。入学には枠が設けられており、彼女が所属したことで、学びたくともそれが叶わなかった受験者が生まれたはず。その相手のことを考えないのでしょうか。あなたの大事な幼馴染もその受験者と同じ境遇と言えるのですよ。*5

自信の所在

ちぃちゃんの目標が「かのんちゃんのできないことを、一人でできるように」であるなら、ダンスは直接的には関係ないのかもしれません。モノは問わず自信を持てるようになれればいいってことですから。

ただ、ここで自分に課していたのは大会の優勝でした。目に見える結果を出すことであり、それには技術が必要。彼女自身の今までの頑張りを軽視するわけではありませんけれども、現在の実力って音楽科に所属していることも含まれますよね。得られる指導、手に入る練習環境、切磋琢磨できる仲間。それらを利用するだけしておいて、もう必要ないからポイだと、そこから得られた自信ってどこにしまっておけるんでしょうね。*6

先生の立場は?

さてぐだぐだと述べてまいりましたが、実は半分くらいは難癖です。私個人の感想としては、お話の重点をクロースアップするために省いた箇所として無視できなくはありません。お目汚し失礼しました。

ただ一点だけ。とても細かい部分になるのですけれど看過できないことがあります。

ダンス大会で敗れれば学校を辞める、勝てば転科。いずれにしても彼女は音楽科を辞める心づもりだったんですよね。これ、誰でもエントリーできる大会に自分から出ていたのだったり、大会へは校内選考を勝ち抜く形だったりしたなら問題はないのですが、ちぃちゃんは学校の推薦を得ているわけで――。

推薦って、現在の実力を見るのは当然ですけど将来性も考えるものです。出場がその子のためになる、これからさらに伸びる手助けになると期待して推すものですよね。

それなのに、負けた場合の話はともかく、勝った場合にも本人がそこに将来を見ていなかっただなんて。推薦をくれた先生方に失礼じゃないですか。そんな恩知らずにしてほしくなかったのですよ……。

上の項目でも述べましたが、結局のところ物語のベースが「勝つ者が正義」になっているところに問題があるように思います。これはちぃちゃんだけでなく、かのんちゃんやすみれの話にも共通するかな。命題はある意味で真なのですけれど、ラブライブ!にそんなお話を見たいわけじゃないというのは私のワガママなのでしょうか。

*1:正確には「示さずに」でしょうが、各々に間接的な目的・消極的な理由ばかりが明示されている以上、同じことです。

*2:表現が意地悪すぎるかも。

*3:サニパと交わした会話が一応のトリガーでしょうね。グループに頼られているという今の自分が、自己評価と一致しなくて不安を覚えたから。または、加わればグループとして完成度が高まると聞いて、加入意欲が高まった。そう考えればタイミングは今でいいのかなあ。

*4:長いこと続けてきているなら横の繋がりもできるでしょう。ダンス関係での友人や知り合いも多いと想像するのですが……。会場でも一人。学校でだって同専攻の中の様子はなし。描写がないのはわざとでしょうけど、ちぃちゃんのバックグラウンドが薄っぺらく感じられます。

*5:かのんちゃんの導入をあれほど屈折した風に描写しながら、一方で千砂都ちゃんには簡単に捨てさせる。基準がとれていませんよね。

*6:自信を得たのが結果的に大会とは別のところにありましたから、お話の結末はまずくはありません。ちぃちゃんが「どういうつもりでいたのか」の問題です。