始めて良かった <ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第 13 話「みんなの夢を叶える場所」感想>

スクールアイドル・フェスティバルのお祭り騒ぎと、侑ちゃんが夢へ向かって新しい一歩を踏み出したお話でした。そして続きを期待させる終わり方で……?

SIF 本番

最終回らしく盛りだくさんの内容でしたね。それらを逐一取り上げているといくら書いても書ききれない恐れがあります。小ネタなどは細かく拾わなくてもいいでしょうから、気になったトコロにだけコメントしましょうか。まずはスクールアイドル・フェスティバルからざっと行きます。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

カウントダウンからのライブ皮切りは歩夢でしたね。この背中からのカットが好きです。我々が(私が)アイドルを見るときは正対して彼女たちのパフォーマンスを楽しむのが普通です。ですがこんな風に彼女たちの視点から見ると、同じイベントなのにまた違った世界を感じられる。それを共有させてもらえるのが嬉しいです。イベント直前の「さあ始まる!」という高揚感は我々観客と同じに、加えて演者側は前に進んで行こうとする感じが良いなあ。空も青いです。

愛さんは打ち合わせ時に言っていた通りもんじゃの屋台でしたか。商魂たくましいですね。ですが、ただもんじゃを提供するではなく、持って歩けるようにアレンジしてあるところがポイント高いと思います。普通に食べようとすれば席につく必要があり、かつ、そこには鉄板も要りますものね。それだと提供できる人数が自ずと限られ、全員に楽しんでもらえませんから。楽しさを皆んなと一緒にと考える彼女ならではのアイデアは素敵です。

兼ねてから言い続けていたステージの上で寝る案を、彼方ちゃんが本当に実行するとは思いませんでした。お祭りだからやれることなんでしょうけども、型破りもここまで行くといっそ清々しいというものです。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

そうそう、各ステージの場面がメンバーに関連したアイコンのワイプで繋がっていたのも印象的でした。作品のカラーと違うからか、こういった画面切り替えは今までになかったと思うのですが、これもお祭りならではの演出でしょうね。テンポ良くぽんぽんと場面が遷移するのは気持ちよかったです。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話*1

果林さんのファン交流は、これは撮影会でしょうか。カメラを構えている子もいましたけどモデル朝香果林は人気ですね。と言いますか、姫乃ちゃんがよくこの場に居なかったものだと思います。アニメではその設定が消えちゃったんでしょうか、確かカメラが趣味だったはずなんですが。自分でステージを持っていると、見る側としては存分に楽しむことができないのが残念ですね。悔しがってそうですが、さて。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

エマちゃんはこの絵で。隣で踊っている子らの様子を見る優しい眼差しが好きです。彼女はその距離の近さが魅力的だと思うんですよね。ステージの上に居るのにすぐ隣に感じられます。ファンを集団としてではなくて、個々を見てくれているような、そんな気がします。

ヒーローショウはどこから言及しましょうか。前話の打ち合わせの様子では、演劇部のゲリラライブのものに、せつ菜(と生徒会副会長)が参加していて、あれ?と思ったのですが、これでしたか。スモークやらそれを吹き飛ばす必殺技やら火薬でドーンやら、彼女のやりたかった大好きがこれでもかと詰め込まれていて楽しそうでいいですね!

ニジは各アイドルがそれぞれで自分のステージを作っている前提があるから、他を邪魔しに行ったり、対抗するため協力したりする構図が生きるのも美しいです。ただあれだけ大掛かりなセットを用意しながら、即興劇はどこまでがアドリブなのかが気になるところですが。

いや、それよりもしずくちゃん、それは ポワトリン ですか?

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

かすみんが神輿*2 に乗って出できたときには、思わず「それな!」と指をさしそうになりました。なんででしょう。彼女には担ぎ上げたいと思わせる何かがあります。ダメにしない範囲でという条件こそ付きますけど、ちやほやして図に乗せてあげたい。ただ、本当に担いじゃうのはどうなんでしょう。担ぐ神輿は軽くてなんとやらという言葉もあったように思うのですが……本人も楽しそうだしいいのかな。

しかしこうして見ると、皆さん当初から思い描いていたアイデアを実現させていますね。スゴイなあ。ニジガクだけでなく、一人白衣羽織ってた理華ちゃんとか、竹刀持ち出してる剣ちゃんとか、やりたいことをやってて本当にお祭りなんだなって思います。

ちょっとした "その後"

そんな中、めちゃかわパワーでお客さんをメロメロに と言っていたかすみんだけが――まあ、他の場所ではしっかりやっていたんでしょうが――望んでいたのとは違う形の出し物になっていて、残念そうにしていました。やられ役はやられ役で重要だと思うんですけどね。かすみんとしては多少思うところがあるでしょう。それを労いフォローに回るしずくちゃんは良いですね。(しかしそもそもの話として、かすみんがこの役を自分から引き受けたとは思えないのですが、誰に言いくるめられ、もとい、説得されたんでしょうね。私はしずくちゃんじゃないかと思ってるんですが……。マッチポンプでは?)

演劇祭のお礼。似合うと思って買っておいたの。

さて、身に付けるものを贈るのは、仲の良い友人に対してなら普通のことです。ですが、これってかなり我の強い行為ですよね。自分が良いと思ったものを相手に "付けさせる"。自分の一部を相手に取り入れさせる、とでも言いましょうか。ある意味で "自分" の押しつけです。特別な間柄だからできることでしょう。

自分を出すことを恐れていた以前のしずくちゃんなら、決してできないだろう行為だと思うんですよね。特にかすみんにとって「かわいい」は重要で、それを担うアクセサリーは結構な意味を持つはず。そんなところに踏み込めるようになったんですね。(10 人も居るので仕方ないこととはいえ)担当回以降の見せ場が少なくて "その後" が見えづらいのを残念に感じていたのですけど、ここに来て成長した彼女が見られたのは嬉しいです。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

もしかしたら、今はじめて愛さんの役に立てた?

愛さんは、役に立つとか立たないとかで友人を見てないはずです。だから璃奈ちゃんのこのセリフはとても水臭いものに感じると思うんですが――。

璃奈ちゃんは愛さんに恩を感じていて、何かの形でそれを返したいとずっと思っていた。愛さんにしてみたら恩を売ったつもりはなくても、その璃奈ちゃんの気持ちが嬉しいんでしょうね。無下にはしないところが愛さんの優しさかなあ。璃奈ちゃんも璃奈ちゃんで、その辺りが分かってそうですよね。それで照れた、と。

え。照れた!? 璃奈ちゃん、顔を隠すのにボード使いましたよね?

隠すのは、抑えきれずに出てしまった表情を人に見られたくないからです。実際にどうだったのかはともかく、璃奈ちゃんは自分の内が顔に出ていると感じて、それを隠したくなったというのなら……なんだか嬉しいですね。(表情を読んでくれる愛さん相手だからという気がしないでもないですが、どうなんでしょう)

返すもの

トラブルはあったものの、フェスティバルはなんとか最後のステージを迎えられます。完全にソロ主体の同好会で、全体曲をどう形にするのか見当もつかなかったのですが、なるほど「あなたへ返すおもい」でしたか。

ニジガクの子たちは皆んなやりたいことがバラバラで、だから同好会はソロ路線で行くことにしました。このフェスティバルは、そのやりたいことを、やっと実現させられる場です。バラバラな夢は一緒に叶えられないからあちこちに分かれ、各ステージではそれぞれのアイドルが思う存分 "大好き" を表現してました。

しかしやりっ放しでは、叶えるのがアイドルたちの夢に始終してしまいます。ここは「スクールアイドルもファンも全部の垣根を超えちゃうような」場所、「みんな」のための場所なのですから、ファンたち見てくれる側の夢も大事にしたい。それが、皆んなに支えてもらっているアイドルたちのおもいなんですね。だから まだ伝えたいことがある と、時間が過ぎていても終わらせなかった。

歩夢は このステージは客席から見てほしい と侑ちゃんに願ってましたが、これもまた重要なことだと思います。同好会の面々、特に歩夢にとっては個人的な結びつきこそ強くても、侑ちゃんはファンに違いありません。今、スクールアイドルの 9 人にはファンに向けて伝えたいことがあるのですから、侑ちゃんにも正しい場所に居てもらわないとですよね。

これは第 9 話ダイバーフェスで侑ちゃんが客席側に回ったのと同じ話です。公式ページのストーリー案内にも 9 人と 1 人の少女たちが と分けて書いてありますが、このアニメは「ファンである侑」をアイドルたちとは明確に区別しますよね。おかげで今までのシリーズではなかった視点や物語の動きなどが生まれ、そこが面白くあるように思います。

あなたが私を支えてくれたように、あなたには私がいる。この思いは一つ。だから全員で歌います。

あなたのための歌を。

歩夢の言葉は侑ちゃんに向けての形を取ってるので分かりにくいですけど、ここで言う「あなた」とは、侑ちゃんだけでなく客席にいるファンの皆んなのことでしょうね。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

ところで、今回のお話では冒頭からノートが意味ありげに描かれていました*3 が、それが何だったのかは結局明かされないままでした。答えを書かないのはその必要ないからでしょうか。

  • おそらく一人ずつが何かを書き込んでいた
  • 侑ちゃんには隠していた
  • 全員が集まれる場(ステージ)で使うための物、もしくはその準備に必要な物だった

分かっているのはこれくらいかな。ノートそのものをプレゼントしたりするのではなく、書いた内容が必要だったように思います。最後の曲の前口上はアドリブが入っていたと思われるので、消去法で中身は歌詞かなと推測しますが、答え合わせができない以上、具体的なモノは何だっていいでしょう。

大事なのは「あなた」に伝えたい 9 人のおもい、ですね。

今まで皆んなには応援してもらって、勇気を貰って、夢を手伝ってもらった。今度はそのお返しをしたい。「あなた」にもエールを送りたい。それがノートに乗せたおもいなんだと思います。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第1話

実はこのノート、第 1 話で侑ちゃんが手に取っていた物と同じなんですよね。彼女にしては可愛らしいのを選んでいる?と思ってたんですけど、これがもし歩夢へのプレゼントだったのなら納得できる気がします。

スクールアイドルを始める歩夢に、それを応援する侑ちゃんが、このノートを贈った。歩夢(たち)は今、そのノートにおもいを綴り、侑ちゃん(たち)に伝える。

アイドルに送ったエールが、またファンに返ってくる形になってるのかなと、そんなことをぼんやり思いました。

代理としての

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

「ファンである彼女」には先にも少し述べたのですけど、やっぱりここは触れておきたいので、ちょっと話を脱線させましょうか。

最後のステージでは浅希ちゃんがペーパーホワイト、今日子ちゃんがライトピンクを振っていました。もちろん色葉ちゃんのブレードは超オレンジに光っているはずです。では侑ちゃんのは?

同じ見切れていているのでも、こちらは色が分からないところに意味があります。上手いですよね。描いてしまったなら侑ちゃんの "推し" が確定してしまいますから。

もともと彼女は "あなたちゃん"。ファンの代表として劇中に生きていて、いわば我々が自身を投影する対象です。こういったアイドルとしては皆横並びであるはずの場で、特定の誰かを贔屓してしまうのはよろしくないかもしれません。

けれども、ブレードが観測されていない以上はどの色だってありえます。9 色が全部同時に存在していると見てもいいし、視聴者は自分の好きな色を彼女に振らせることもできます。粋な計らいじゃないでしょうか。

ここまで書いて、第 1 話で、スクールアイドルにときめく侑ちゃんの姿に共感を覚えたのを思い出しました。その後もたびたびファン全員の代理であることを示唆してくれていた彼女は、そうか、ちゃんと最後まで「もう一人の私」で居続けてくれるのですね。嬉しいです。

進む道

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第13話

何事も全部うまく行くなんてことはあるわけなくて、実際は後悔しちゃうことばかりなんだと思う。でも!

さて、侑ちゃんは見つけた夢を追いかけるため、新しい道を行こうとしています。ただ、物事を進めるのは簡単にはいきませんよね。新しい事を始める場合は特に、先に何があるか分かりませんから。

自信をつけるために、彼女はまず目の前のフェスティバルを成功させようと頑張っていました。思いつきだったアイデアは十分に練られてしっかりとした企画になり、皆んなと一緒に準備を万端にして当日を迎え、演者とサポーターたちの気合も入っている。開けてみたら観客の反応も良くて、途中まではバッチリでしたね。しかし不意の雨で続行が困難になります。

できることは全てやった。でも誰にもどうにもならないことが原因で駄目になることはあります。ここでは 天気予報は晴れだった というのがさらにキツいですね。予想さえできなかったことですから。でも、ですよ。フェスティバルは皆んなの支えで素敵なフィナーレとすることができましたよ。

そうです。何かを始めるのは大変なことだと思います。躓きそうになることもあるでしょう。でも! それらを乗り越え、こう思えるようになったら幸せですね。

ちょっと思っただけ。始めて良かったって。

*1:この絵は不思議な構図ですよね。エマちゃんが生えてきたのはカメラに向かってだけ。カメラを通して見るから、目の前にぬっと現れて視界の半分を塞ぐように思えるのです。ですが果林さん視点では、彼女はただカメラの前に居るにしかすぎません。せいぜい何をやっているのかを怪訝に思う程度で、こんな風にびっくりすることはないはずです。この絵では視聴者の驚きを果林さんが代弁してくれているんですね。

*2:車輪が見えていたので実際は山車ですね。本当に担ぐものなら、あの高さの上に乗るのは危険だと思います。

*3:歩夢が渡そうとしている方は右開きになってますね。作画ミスでしょうか。