縛られていた <ラブライブ!スーパースター!! 第8話「結ばれる想い」感想>

ここのところ毎回思います。感想を書くのが難しいー。今回は恋ちゃんの気持ちに沿ってみましたが、うまくまとまりませんでした。

嫌いでなくてはいけない

まず最初に一つ。

何かを「嫌わなくてはいけない」ということは、とても辛く、悲しいことだと思います。それが本当は好きなモノだったり、気になり始めているコトだったりした場合は特に。これは多分、心を縛られていた少女のお話なのでしょうね。

行動ならば外的要因で制限されるのはごく当たり前のこと。人間は好き勝手には生きていられません。納得がいかなくても渋々飲み込むことだって多くあります。しかし、心の中、その思いや考えを縛られるのは、あってはならないことです。心は自由であるべきなんですよねえ。

「こう考えるべき」と(間接的にでも)押し付けてくる相手がいても、対話可能ならば戦えばいいのですよね。思えば某所にも、最初は「ルビィも嫌いにならなきゃいけないんだけど」と言っていた赤髪の娘がいました。彼女は姉に直接伝えることで自分の思いを認めさせていましたね。*1

しかし故人相手ではそれがかなわない。それでも生前にそう言っていただけならば、「わたくしはお母様とは違うのだから」と割り切ることもできるでしょうが、母親の遺志を尊重する流れの中で、さらには自分が出した結論では、曲げるわけにも、無視するわけにもいかなくなります。

ソレは当初自分もやろうかと考えていたコトです。本当は嫌いなわけがない。だから心は惹かれる。でも頭はそれを押さえつける。

無いものとして扱えればまだ良かったんです。目の届く範囲になければ、そんなものの存在なんて忘れて――忘れたつもりになって、毎日を平和に過ごせた。でも、ソレを始めようという人たちがいます。楽しく活動していて結果も出している。人数も増えだんだん大きくなってきている。

嫉妬と憧れとがあふれそうになるのに、「認めてはならない」が依然としてそこにあって、自分の気持ちにふたをするんですよね。こんな状態が続くなら元を断つしか、無理にでも嫌いになるしかないじゃないですか。

頭で考えたことだからロジカルであるはずなのに、出発点が間違っているから、彼女はまったく論理的でないのですよね。かのんたちにアレコレ言っていたのも、結論ありきの後付けばかりでした。

いえ、「自分はソレが嫌いなのだ」という感情的な話にしたいのなら、むしろ筋が通っていないほうが逆に理にかなってると言えるのかもしれませんね。その姿はとても悲く思えますが……。

そんな間違っていた出発点を正して、呪いを解いてくれたのがメンバーたちでした。中でもかのんちゃんは、頑なに事情を話そうとしない恋ちゃんを、本当に辛抱強く待っていましたね。邪魔立てする相手なのに、それでも何かあるはずだからと見極めようとする姿勢が好ましい。尊敬に値します。

花さんのおもい

物語を花さん側から見ると、娘や後輩たちにおもいをどう伝えるかの話だったのでしょうか。

廃校を阻止するための活動は失敗に終わったけれども、その中で得られたものは大きかった。その素敵な体験を大切にしたいから、もう一度同じ場所に学校を創った、と。彼女は単に形だけを再建したかったわけじゃないのです。その学校だから経験できたというポテンシャルごと残したかった。

みんなで一つになって何かを成し遂げるのは、なにも同じ学校でなくてもできます。立てて「ここにもう一度」というからには、ならではの特色が大事だったんでしょう。神宮音楽学校は音楽で結ばれた学校でしたね。だからそれを継ぐ結ヶ丘も音楽を尊び、新設校なのに前身の歴史をことさら重んじた。ここまでは良かったんです。

ところが肝心のおもいを伝えるためのアイテムを「宝箱」なんかに入れたがために、見つけてもらえず、娘をはじめ後輩たちが迷走することになるわけですが。まあ、お母さまは独特の感性を持つおちゃめな人だったんでしょう。(そう思うことにしました。笑)

娘は母親の志を尊重し、勘違いしたまま、学校を無くしてはならぬと奔走します。*2 ここでも悲しいのは、恋ちゃんが母の遺志をガワしか見ていなかったこと。学校のハコを残すことだけに意識を取られて、中の人間を見ていなかったのは寂しいです。

文化祭の件でも、どうすれば学校を残せるかの視点でしか見ていなかったんですよね。学校本位で生徒は置いてけぼりです。蔑ろにされている普通科はもちろん、音楽科もいいように持ち上げられて使われているだけ。学校のための道具とみなされているわけで、どちらも酷い扱いをされていました。これでは生徒が一つになるのは難しいでしょうね。

花さんが本当に残したかった中身は娘にも伝わっていなかった、という話ですね。これについては現役世代の問題だけでなく、学校を創った先代の占める責任が大きいと考えるので後述します。

問題解決となる(?)

4 人が先代スクールアイドルの残した物を見つけたことで問題は解決に向かいます。恋ちゃんは母親に対する誤解が解けてスクールアイドルへの偏見がなくなり、生徒たちは己がふるまいを恥じて分断は解消される。めでたしめでたし。

でもちょっと待ってください。キーアイテム一つで全てを丸く納めているので勘違いしそうになりましたが、恋ちゃん vs スクールアイドルと、音楽科 vs 普通科は、たまたまかぶる部分があるだけで全くの別問題ですよね。

恋ちゃんはスクールアイドルを「嫌って」いましたが、これは母親の活動に起因すること。かのんちゃんたちが普通科なのとは無関係です。恋ちゃんが普通科所属だったとしても、かのんちゃんたちが音楽科の生徒だったとしても、やっぱり彼女はスクールアイドルを認めていない。彼女の主張は結論ありきでしたから、その口実が別のものに変わるだけです。

一方普通科と音楽科の溝は、学校の在り方に問題がありました。恋の公約違反(未遂)は単なるきっかけにすぎず、放っておいてもいずれ問題は目に見えて現れたはずです。

ですが一般の生徒は事情を知らないためか、その二つを混同していたように思います。スクールアイドル不遇の理由を所属学科の差に求めていましたよね。議論の場でも声が上がっていました。

そのせいで、本来は別々の問題だったものがオーバーラップしているような錯覚を受けるんです。さらに解決も同時となると、境界がよりわかりにくくなります。二つの事柄を一緒くたに処理すればお話が曖昧になるのは当然かもしれませんね。せっかくのクライマックスがぼんやりしたままでは、カタルシスを感じにくいでしょう。非常にもったいなかった。

ところで、一般生徒は、恋がスクールアイドルを嫌っていたのを知ったようですが、その誤解の元は知らないのですよね。あの場で彼女のスクールアイドルとの邂逅を見せられても理解が追いつかないと思うんです。拍手してたのは、雰囲気に飲まれていただけじゃないかと推測するのですが。笑

理事長、あなた

さて今回の感想はここまでです。ここからは蛇足。少し先代の話をしましょう。理事長さんには言いたいことがたくさんあるんです。

見守るって

恋ちゃんの保護者というわけではないようですが、校内での後見人的な立場で間違いないですよね。友人の花さんから「見守っていてほしい」と言われているともありました。

確かに要所要所で恋ちゃんの行動を気にかけていたようですが、見守るっていうのはただ見てるだけでいいんですか。いくら自立を重んじるといっても、明らかに間違った方向へ歩き出しているのに、しかもそれが自分たちの責でもあるのに、まったく手を差し伸べないのはちょっと。

今回はかのんちゃん(たち)のおかげで事なきを得ましたが、これはただの偶然です。

本当ならばかのんたちが恋の事情を知ることはなかったはずなんです。お家にお邪魔した時に「たまたま」家計を知ってしまった。それがバレたから、恋ちゃんはやっと裏を話すようになったんですよね。事情を知ったことで 4 人は初めて学校側の立場で動き出すわけで――その「たまたま」がなければ、最終的にノートが見つかることもなかった。物語は動かなかったんです。

起こっている問題は二つありました。内、恋ちゃんのスクールアイドルに対する偏見の方は現状が続くだけなので、この時点で解消されなくても大丈夫だったのかもしれません。しかし、不満が噴出してしまった学科間の分断は、かなりヤバかったと思います。

恋ちゃんは学校本位でしか文化祭を考えていなかったから、皆をまとめようがありません。他に策がなかったからああやって強行したわけで、自分の発言で混乱させたことを反省・謝罪しても、そこ止まりでした。代替案を出せるわけがない。集会の場は収拾がつかなかったでしょうね。

それで文化祭中止になろうものなら、普通科と音楽科はお互いを責め合っていただろうことが容易に想像できます。溝は修復不可能になりますね。

多人数が関わるいがみ合いは難しく、円満に仲直りするためには、一つに実質的な被害が出ていないことが条件じゃないかと思うんですよ。向こうにも事情があったと頭で理解することと、それを心情的に許せるかどうかはまた違いますから。*3

とまあ、おちゃめな友人が伝えたかったことが娘に伝わっていない現状で、しかも取り返しがつかなくなりそうだったのに、理事長さんは何もしないんですか。と、そんなことを考えてしまうんですよね。

友人と交わした約束は大事でも、その言葉の上っ面だけを守ることになんの意味があるんでしょう。

仮に友人がそこにいて間違ったことをやっていたとして、それでも意見したり止めたりしないのかな。友人の本意は理解しているのだから、意図していたのと違う方向に進んでいたら修正すると思うんだけどなあ。

戦いはまだ続いてる

友人は学校を残すために戦った。自分はそれを一緒になって応援していた。結局廃校は免れませんでしたが……。学校の良さを残すために再び建ったというのなら、その戦いはまだ続いていますよね。遅かれ早かれ現役生徒の手にすべて委ねることになるでしょうけど、少なくとも軌道に乗るまでは先代も背負っているはずです。

学科で分かれた制服、新旧校舎の別、整列するときの前後で分けるやり方。今ある学校はどれも分断を助長するものです。これで差別意識が生まれない方がおかしいんですよね。花さんが夢みた「一緒に」なれる学校のありようじゃないんです。

応援していただけの昔とは違って、今では理事長というガッツリ関わる立場にあるのに、あなた戦わないんですか。

学校なんて大きな組織は一人で作るモノじゃないですから、花さんや理事長が考えたようにはできないこともあるでしょう。けど現状が足りていないのなら、少しくらいは奮闘なり、恥じる様子なりを見せてくれてもいいんじゃないかと思うんです。

少なくとも入学式のあの挨拶だけはいただけない。第 1 話の時点でも酷いと思っていましたが、こんな事情になっていたと知った後では、ホントもうあり得ません。「特に音楽科の生徒引き継ぎ〜」って……。「音楽科の生徒はもちろん、普通科の生徒も引き継ぎ〜」とかで良かったんじゃないです?

やってきたことの否定

実は私、第 2 話の恨みをずっと引きずっていたんですが、ここで再燃しました。クーカーの二人に出した課題は友人の夢の否定じゃありませんか?

結果を出すことは確かに大事です。しかし花さんが残したかったことは、そんなことではなかったはず。自分たちのやったことは、結果こそ良くなかったけれども、過程で得られたものが素晴らしかった。その後者の部分を伝えたかったんですよね。

勝たなければ認めない、では真逆を行くことになります。自分らが得たものを否定することになるけど、いいんかな。

そもそも結果云々以前にも、目標を自分たちで定めてそれに向かって頑張るのと、人から与えられて何がなんでもこなさなくちゃいけないのは大違いなんですよね。前者は到達するまでの道のりも大事にしますが、後者はゴールしか見ないことになります。所詮は与えられた物。当事者不在の課題です。せっかく同じスクールアイドルを始めたいと言っている生徒たちがいるというのに、課すものとは思えないんですよね。*4

他にも無茶をさせたばかりに、ってダメだ、だんだん論点がずれていくのでこの辺りでお口チャックしておきます。

ちなみに、最初に提示した条件をクリアしてなくても活動は認めている、というのも結果論です。努力目標のつもりだったという抗弁も成り立ちません。たとえそれが勘違いだったとしても、かのんちゃんたちが「一位が条件」と思っていた以上は同じことです。適切に伝えられていない時点で指導側の失態ですから。

舞台装置

ラブライブ!は高校生の女の子たちのお話です。大人たちが介入しない、とはよく言われていますよね。

スーパースター!! ももちろん同じで、大人たちはプレイヤーではありません。お話の中で努力したり、失敗したり、成長したりなんてことはしない。大人は少女たちが輝くための舞台装置にすぎません。だからその行動にアレコレ言うのは、ええ、きっとナンセンスなのでしょう。あるがままに素直に受け取るのがタブン正しい作法なんだと思います。

それでも文句を言いたくなってしまいます。メインのお話にもっと没入させてほしいんだけどなあ。

*1:ラブライブ!サンシャイン!! 第 4 話「ふたりのキモチ」は好きなエピソードの一つです。

*2:創立者の娘として知る権利が〜」と運営・経営側の立場でモノを言っていたのにもかかわらず、結局恋ちゃんは生徒会長として、生徒側からのはたらきかけしかしていません。そのチグハグさには首を傾げます。

*3:同好会の話も同様ですね。恋ちゃんのせいでアレコレ迷惑は被っていましたが、結成も出場も練習場所も、欲しいものは最終的に手に入れられています。

*4:最終的に彼女たちは優勝を逃しながらも最高のライブができました。奇しくも先代とよく似た経験なんですね。結果は出ずとも中身が伴い、その内容には満足できた。それはとても喜ばしいことですけれど、残念ながら結果論でしかないのも事実です。