ウラハラな少女は待ちて <ラブライブ!スーパースター!! 第4話「街角ギャラクシー☆彡」感想>
ギャグに寄せた、楽しくて最後は明るいお話。……に見えながらも、どうなんでしょう。まだちょっと暗い、と言いますか燃焼しきれないものが残るエピソードに思えたのですが。
日の当たらない少女
アバンでは「前回の~」が済んで今回の導入に入るなり、即グソクムシとはまた酷かったですね。
グソクムシと呼ばれる仲間は深海生物です。日の光が届かない場所で生息する生き物。ステージの上で輝きたいと願い努力し続けるも、決してスポットライトが当たることのない少女に演じさせるには、少しばかり酷な配役だと思うんです。この上なく適切にすみれを描写する画だとは言えますけれど、ストーリーが意地悪だなあ。
さて今回は、そんな彼女がスクールアイドルに興味を持つところからお話が始まります。知らなかったのか少し調べたのちに彼女が持った感想は「アマチュアみたいなもの」と見下したふうですが……?
彼女、素直じゃないと言いますか、思っていることと違うことを口にするから難しいんですよね。*1 スクールアイドルは程度が低いから取るに足らないと、本気でそう考えるなら興味を持たないはずなんです。その世界に入っていっても自分の夢は叶えられないのですから。
彼女がスクールアイドルを意識することになったキッカケはクーカーのライブでした。たまたま知ったイベントを覗きに行ったらトラブルを起こしてしまった。やっちゃって気まずいと思う*2 なら電源を復旧させた時点で逃げればいいのに、曲が終わるまでその場に残ってるんですよね。その後、我に返って慌てて駆け出す様子からは、二人のパフォーマンスに見入っていたことが見て取れます。何かしら惹かれ、感じるものがあったのでしょう。
しかしよくよく見てみると、スクールアイドルというモノの技術は、大したものではないことに気づきます。まがりなりにもプロの世界でやってきたすみれの目には劣って見えた。これならできる。そしてあの舞台に上がれば自分にも光が当たる、と考えるのは想像に難くないですね。
でも蓋を開けてみれば、自分より下だと評価していた二人にも勝てません。
- すみれ
- センターになれないんだったら、こんなところにいる意味ないもの
嘘……ではないですけど、本心はそんな即物的なところではなく、もう少し深いところにありますよね。二人より実力が上だと判断したから、自分もあんなふうに輝けると思ったからスクールアイドルの戸を叩いたのに、その前提が間違っていたと見せつけられれば*3 失望だってします。
どうあっても自分はスポットライトを浴びることができないと。その事実を突きつけられて、拗ねたといったところでしょうか。
人のいない街で
2 度目の原宿のシーンもなかなかのモノでした。人っ子ひとり居ない街並みを、ただ声をかけられるためだけに往復する。いくら雨の日でも、ひと気がゼロで、店まで閉まっているってことはないでしょう。これは、その前のシーンで道を尋ねられた時に返した答えが手がかりじゃないかと思います。
- すみれ
- スカウトじゃないなら声かけないで!
彼女にとっては、自分を見つけてくれるスカウトだけが存在意義を持ちます。他の人は居ないのと一緒。いくら居ようが目に映らないのだとすれば、あの寂しい街並みになるのも納得*4 ですが……。
彼女はアバンで通行人としてスカウト?されていましたね。それを受けた上でこのシーンを見ると、通行人を消す描写はかなり残酷だなあと思うんです。逆の、スカウトの視界からも「通行人」=すみれが消えているってことですから。彼女には絶対に声が掛からない世界です。
まあそれはともかく。すみれにしても「誰も居ない」のが分かっていて、それでも声かけを待っているというのは寂しすぎます。雨だと人も少ない、の言い訳が虚しく響きますね。
そして、ここにも言っていることと、やっていることとの不一致が見えます。「そういう星の下」に生まれてきたと本当に信じているのなら、未だにこうしてスカウト待ちをしているはずがないんですよね。効果がないと言いながらも、ずーっと持ち続けていたお守りと一緒。諦めきれない部分があるからやめられないし、お守りだって外せない。
待ちの姿勢
いくら頑張っても報われないと感じているのは、確かに以前のかのんちゃんと同じ構図ですね。喫茶店の娘さんが同じように不貞腐れていたのは記憶に新しいです。
そうですね、二人に共通していると思えるのは、譲れないものがあるくせに諦めが早いことでしょうか。もう一歩の必死さがないと言ってもいいですが。そのせいでどこにも行き場がなくなっているように思います。
すみれが頑張っていないとは申しません。ですが努力は必ずしも報われるものではありませんよね。全員に一等賞を与えることはできないのですから。
ではいざ一等を取れなかったときにどう考えるか。やれることは全部やった、力は全部出し切ったのだから、悔しいけど仕方がない。そう思えるなら諦めもつきます。私の努力が足りなかった。そう考えるならより研鑽に励むでしょう。
- すみれ
- 私はさ、そういう星の下に生まれているの
- どんなに頑張っても、真ん中で輝くことはできない
しかし、自分が報われない運命にあると結論づけるなら、その考えは自らを縛ることになります。「続けても無駄」なのだから打開策を見つけようともしなくなり、自身に責任があるとも考えないのだから諦めだってつかない。八方塞がりです。
彼女は結局のところ、努力はしていてもアガリへ向かう最後の一歩を他人に委ねてしまっているんですよね。オーディションで選ばれるのを待つだけ。スカウトで声を掛けられるのを待つだけ。自分からは動きません。
どちらも向こうからのアクション待ちになるのは仕方ないのですが、それでずっと不作続きだというのに、原因を自分の中に求めようとしないのです。*5 例えば何かが足りていないのかもと考えてみる。例えば待つ以外のアプローチ方法はないのかと模索してみる。そういった足掻きをせず、「できない私」を簡単に受け入れてしまうから、どこにも行けなくなってしまうのです。
やっぱり以前のかのんちゃんと似てますね。かのんちゃん場合は、可可が半ば強引に引っ張り出して、歌える場所と引き合わせてくれました。今度新しい友人のために一肌脱ぐのは、その気持ちがわかる彼女の番ですかね。
- かのん
- みーちゃったー
すみれはスクールアイドルの世界を「いる意味がない」と放り投げていましたが、これもダウトでしょう。未練が残ってなければ、店先のテレビに映った振りをコピーして、自分が(技術的には)やれることを確認なんてしませんもの。本当に裏腹な行動ばかりとってくれます。
そんなウラハラな彼女を動かすためには、うまく口実を作ってあげる必要があります。彼女の目にはスカウトしか映らないと言うなら、茶番に乗せるしかない。かのんちゃんの機転は good job でしたね。
足りなかったもの
非常に安い言い方をあえてしますと、すみれの求める根底にあったのは承認欲求なのだと思います。いくらでも替えの利く通行人ではない、ただ一人の平安名すみれとして自分を見て欲しかった。
となると、此度のスカウトは彼女の望みたり得ますよね。興味を持った活動に加わり、これまでに自分が培ってきた知識と経験を生かしてそのグループを高めていく。他の誰でもない、彼女にしかできないことでしょう。かのんちゃんの誘いは求めてるものに思えたはずです。
最初に思っていた主役とは違うのかも知れませんけど、たとえ脇役だって「どうでもいい」ものばかりではないのです。真ん中でなくとも輝ける場所はあります。この考え方ができるかが、彼女に足りなかったまず一点目。
- かのん
- すみれちゃんを見て私思った。センターやってみようって
- だから奪いに来てよ
もう一点は、どうしても欲しいんだったら待ってるだけじゃダメだってことでしょう。最後の一歩を他人に委ねたままで、いつまでたっても出てくれない結果を、ただ指くわえて見てるんじゃなく、なんとかしてその一歩も自分の足で進んでいかなくちゃと。
出来ていないのはかのんちゃんも同じだったはずなので、ここで指摘できるようになったのは彼女の大きな進歩ですね。発破の掛け方もうまいです。
他力?
さて、かのんちゃんが「契約金」としてすみれに渡したのがお守りでした。アバンではすみれのお守りが大きく抜かれていましたから、本エピソードの最初から最後までを貫くアイテムになると思います。ですが、これをどう解釈していいものか迷っています。
お守りとは神様からの加護を得るもの。自分の力ではどうにもならないところで悪いことが起こりませんように、良いことが起きますようにと神様に頼むものです。このお話の中では他力を象徴するものに思えるんですよね。*6
実際、すみれは他人であるかのんちゃんに全部お膳立てしてもらったわけで、今回自分では動いていません。外からのはたらきがなければ何も変わっていなかったはずです。かのんちゃんにしても、ライブが始まるまでは全部可可ベースでしたよね。可可ちゃんのために、可可ちゃんがそこまで言ってくれるならと、他人が行動起点でした。
もちろん今があるのは、本人たちの元々の頑張りがあってこそなのですけれども。二人とも、なんとか居場所が見つけることができたのは外的要因のおかげだったんですよね。彼女たちの内側からは出ていません。
その辺りを思うと、このお話でのお守りの意味がよくわからなくなるんです。
- かのん
- 諦めないかぎり、夢が待っているのはまたずっと先かもしれないんだから
最後のセリフも、彼女なりの「好きなことを頑張ることに、お終いなんてあるんですか」なのだと思います。
しかし現段階では、可可のものと比べると脇が甘いような気がしてならないのですよ。夢に出会えたのは確かに諦めなかったからなのでしょうが、そこまでのアプローチ方法はどうするのだろう、と問うてみたくなります。
最後に
さてさて。このエントリーは当初思っていたものとはずいぶん違う内容になりました。もう少し柔らかいトーンで綴るつもりでいたんですけど、気づけば、すみれとかのんちゃんに厳しいものになってしまっていました。主人公たちには前向きであって欲しいと思う、私の勝手な願望がそうさせたように思います。申し訳ない。
でも厳しいついでにもう一つ加えちゃいましょう。
この二人はスクールアイドルへの純粋な積極性を(まだ)見せていないですよね。かたや音楽科で歌えなかった代替として、かたやショービズの世界で輝けなかった代わりとして、最初に願っていたのとは別のものを、いわば妥協で始めたにすぎません。
そんな彼女たちが、スクールアイドルに何を見出し、どう自分なりの形を見つけていくのかは気になるところです。
かのんちゃんはその片鱗が前話の最後に見えたような気がしましたが*7 ――いずれにしても、これからに期待ですね。
*1:同じ巫女さんでも、エセ関西弁をしゃべるほうが彼女を見たら「めんどくさい人」って言いそうです。
*2:アバン明け、学校では二人を避けていましたね。
*3:具体的な指標を見せるのが生々しくて、また、嫌らしい。Aqours の 0 票でも同じことを思いましたが、言い訳の利かない絶対的な数字を持ち出してくるのが残酷です。
*4:前のシーンは尾けていたかのん目線だったので、通行人がちゃんと描写されていました。
*5:少なくともエピソード中に描写はなかったように思います。
*6:まあ、裏を返せば、自分の力でなんとかなるコトは全て自分でしなさいってメッセージなのかも知れませんが。その後のやりとりからそうは読めませんし。うーん。
*7:本エピソード A パート頭で葉月さんに語っていた言葉には熱がこもっていたように思います。