認め支え合う <ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第 9 話「仲間でライバル」感想>

果林さんの魅力であふれるお話でしたね。同好会としては、ソロアイドルがわざわざ集まって活動していることの意義を問う回で、とても濃い 24 分でした。同好会の足りてなかった点を指摘し、またソロでパフォーマンスする果林さんはやっぱり素敵だったなあ。一方で弱いところを見せる姿も良かったですね。

果林さん

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第9話

果林さんについては 第5話、エマちゃん回の感想 でいくらか述べました。(第 2 話分でも少し)クールでカッコいいお姉さんですよね。モデルという職業柄か、人からどう見られるかを常に意識していて、振る舞いに気を配っている。ただ、こう在るべしのイメージに固執するあまり、自由には振る舞えないキライがあった(過去形)ように思います。

今回のお話では、かわいい物が好きなところや、迷子属性などがうまく話の中に散りばめられていて、彼女がより魅力的に見える作りになってましたね。

素敵なお姉さんの意外に可愛らしいところや、隠しているダメなところがちらっと見えるのって、どうしてもこうも好ましく感じるんでしょうか。身近に思えるからかな。彼女の場合、自分のイメージから外れる面はいい塩梅に外には見せないようにしてますから、それを知れる特別感のようなものもあるのかもしれませんね。

試される同好会

さて、今回は合同ライブのお誘いが舞い込んできたところからお話が始まりました。出演候補は 9 人も居るのに、同好会の持ち枠は 1 曲分しか無い。出演することに誰も異論はなくとも、誰を出すか決めるのに難航するのは必死です。

ですが、私たちは――。

ここで遠慮しあって詰まるのは、今までなあなあでやってきて、同好会としての方針を定めてこなかったからですよね。

一度バラバラになった同好会が再結成したとき、第 4 話冒頭で新しく手に入れた部室の掃除のシーンから入ったあの描写は好きでした。直接には和解のシーンを描かなくても、わだかまりを払拭して同好会が新しくなったことが示してあって、いいなと思ったんですよ。

ですが、それは過去の精算の話です。そしてその後、グループでは上手く行かないようだからそれぞれの個性を生かせるソロで、となったところまでは良かったんですが、なんとなくそれで結論としちゃって、集まりとしての目的のようなものを決めずに走り出してしまったのが、もったいないなと思っていたんです。

ソロだと各々が自分勝手にできてしまうのが、良くも悪くもありますね。他人と合わせる必要がないから、自分の好きなようにプロデュースできるのは明らかに強みですけれども、そのままではソロの寄せ集まりなだけで、まとまって活動している意味がありません。せいぜい練習を教えあったり、準備を手伝ったりができる程度でしょうか。

仲良く楽しくやるのはとても大事です。でもそれだけでは「ソロで」と決めたのが逃げに終わってしまいます。集まっている人数をわざわざバラしたのですから、ただ独りでソロをやっている以上の何かがないと。

果林さんは「同好会が試されるライブになる」と言っていましたが、一人だけを選ばなくてはいけない今こそが試されている瞬間なんでしょう。同好会の意義をはっきりさせるいい機会ですよね。

仲間だけどライバル

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第9話

だから本気でそれに立ち向かえるメンバーを選ぶべきよ。

最初の話し合いで特定の名前が挙がらなかったところを見るに、みんなのパフォーマンスに差は殆どないんだと思います。今回は全く知らない場所で賽の目がどう出るか予想もつかないから、決め手になるものが何もなさそう。選出時点で差がないのなら、それこそくじ引きで決めても期待できる結果に違いはないのでしょうが、それで納得できるものかどうか。

根拠もなしに無作為に抽出しただけのメンバーに、同好会を、つまりは自分を賭けることができるかといえば、否です。意見の統一はともかくとして、誰に任せれば納得できるかの視点は絶対に必要でしょう。意地の悪い言い方をするなら、万が一失敗した場合にでも、この人なら仕方がなかったと思える代表を選べるかどうか。

皆が遠慮し合うばかりな中、それを指摘できる果林さんは、意識の持ち方で一歩先を行っていたんでしょうね。

ダンスの件にしてもそうです。*1 果林さんは他のメンバーを追い付き抜きたい存在だと見ていて、そのための努力をしていたようですが、せつ菜や歩夢はピンときてなかったですからね。

ソロでもせっかく一緒に居るんですから、お互いを意識し、刺激しあう関係で居たい。同好会であることのメリットは、まずこの辺りですよね。

後から加入したこともあるんでしょうけど、果林さんはその認識もしっかり持っていたってことかな。

それなら今回は一人しかいないよね。

愛さんの「今回は」という限定的な言い方は、悔しくも認めている様子が表れていて好きです。これで負けたつもりはないし、もし次があるなら自分が取る。でも今回は果林さんがやってくれると信じている。

競争相手を信頼して大事な場面を任せられるのって素敵ですね。ライバルはただ競い合うだけの相手じゃなく、自らが認める人でいなきゃ。

Vice versa(逆も然り)

果林さんは一人舞台裏で会場からの大きな歓声を聞き、不意にその圧力に圧倒され怖気づきます。

物理的なエネルギーって絶対的なところに怖さがあります。人間一人に出せる力なんてたかが知れていますからね。それを大きく上回る力には直で勝てるわけがないのだから、立ち向かいたくても萎縮してしまうのは分かります。

彼女はニジガクの代表として、独りでアウェイのステージに立つつもりでした。他の 8 + 1 人を背負っている(2 校の推薦を受けての出場だから、東雲と藤黄の面目もですね) のだから恥ずかしくないパフォーマンスを、という気概は間違っていなかったと思うのですが、「独りで」がダウト。他のみんなは背負う対象ではなく、支えてくれる人たちですよ。

果林さんは自分のイメージを大事にしているようですが、見せてもいい相手には弱いところを隠さないのも、またカッコいいなと思うんですよね。見られたのがファンだったら意地でも強がっていたでしょうけど、今駆けつけてくれた同僚相手に虚勢を張る必要はないですから。でも自分が弱いと認められるのはなかなかできない事だと思います。

なんでそんなに優しいのよ。

って、当たり前ですよね。仲間だもの!

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第9話

果林さんはライバルって意識ばかりが強かったようですけど、皆にとってみれば果林さんが仲間でもあるのは自明のようです。ここでは代表を決めようとしたときとは立場が逆で、他の皆に先に行かれていたみたいですね。

果林さんは一度挫けてますけど、それが土がつかない失敗で済んでいるところがお話としていいなと思うんですよ。

小さくなってる果林さんを見つけても、誰も失望したりしてないんですよね。認めたライバルだからきっとやってくれると信じてるし、仲間だから支えようとする。そして果林さんは皆の期待通りに立ち直って、素晴らしい舞台を披露してくれましたね。同好会サイコーです!

少し視点を外して

メインの話題は以上なのですが、今週もちょこっと外したところに言及させてください。

既存ファンの心境

果林さんの最初の見立てでは、綾小路さんが推薦してくれたのは「厚意」だけではなさそうだ、とのことでしたが、実は多分に「好意」が含まれていたというオチはなかなか秀逸だったと思います。姫乃ちゃんはモデルデビュー時からの果林さんファンなんですね。

そう、果林さんは既存のファンが居るところからスクールアイドルを始めたんです。

ニジガクのお話は、9 + 1 人のスクールアイドル活動を描いているので他の軸をあまり意識することがなく、果林さんが読モをやってるといっても(しずくちゃんとかと一緒で)「ただ二足のわらじを履いている」くらいの印象しかありませんでした。だから今回「それ以前」があった事実に気づいて思わず膝を打ちました。一連のシリーズでは他にない経歴のアイドルですよね。

姫乃ちゃんを通して見えたのは既存ファンの気持ちです。

応援している人が別の分野へも活動を広げるって嬉しいですよねえ。モデルからアイドルへ。売り出すイメージの変更もありませんし、ファンとしては不安が少しとそれ以上に期待でいっぱいといったところでしょうか。

特に姫乃ちゃんから見た場合、自分が活躍している分野へ進出してきてくれるなんて稀有なパターンです。その世界の大変さはよくわかっているでしょうから、参入してくる憧れの人に対しては……おもいは複雑でしょうね。目一杯手を出したい。でも私なんかが烏滸がましい。いやそもそも手助けなんかなくても問題ないと "知って" るし。そんなあたりがぐるぐる回ってそうです。笑

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第9話

そして、期待を遥かに超えたパフォーマンスを特等席で見られるなんて羨ましいですね。競合他校だからライバルには違いありませんけど、雑誌の中から抜け出してきた以上の姿が見られるのは、この上なく嬉しいだろううなあ。これからは同じ世界で競えるなんて素敵だと思います。

侑ちゃんの向かった先

さて個人回もこれで終わり、次回からは全体のお話か、侑ちゃんにフォーカスを当てたものになるのかな。

今回侑ちゃんは、果林さんをステージに送り出した後、90 度違う方向に走り出してました。

ちゃんと果林さんを応援したいんだ。

「ちゃんと」ってはっきりしない言葉なのであまり好きじゃないんですけど、ここでの使い方はすごく好きです。

ふむ、袖からの応援ではライブを見るのには足りないと。侑ちゃんはそう思んですね。確かに演者がパフォーマンスをするのはお客さんに向かってです。舞台脇にいては正しく見えないですものね。

ですが他のメンバーは脇からの応援で、観客側に回ったのは侑ちゃん一人でした。これは演者とファン(サポーター)が分かれていることの仄めかしなのかなあ。

目をキラキラさせて見てましたけど、彼女は自身がアイドルをするのではなく、やっぱり誰かを応援することの中に何かを見たいんでしょうか。そんなことをぼんやり思った第 9 話でした。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第9話

*1:ひけらかすでも隠すでもなく、必要なことを淡々とやる姿は素敵です。そのストイックさは見習いたいですね。