こんな優しさが <ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 第 5 話 「今しかできないことを」感想>

エマちゃん回だと思いきや、果林さんにも切り込んだお話でしたね。本心をしまい込んでしまっていた果林さんと、それに気づいてあげられてなかったと嘆くエマちゃん。エマちゃんは誰かのために動いている時が、より魅力に溢れて見えるのだと実感できたエピソードでした。もっと果林ちゃんのこと知りたい、聞かせてと告げる姿は素敵だったー。

果林さんの枠

まずは果林さんから行きましょうか。

クールでカッコイイ

でも私は、朝香果林はそんなキャラじゃない。

果林さんも自分を枠にはめて考える人ですよね。モデルとしてのプロ意識が高いからなんでしょうか、常に人に見られていることを意識していて、求められている自分像を常に維持しようとする。生徒会室で菜々ちゃんと対峙したときもクールに決めてましたし、食堂で下級生に声をかけられたときも堂々としてましたね。大人な女性、ステキです。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話

ですが、それが彼女の全部なのかというと、もちろん違うわけでして、今回はそれをめぐるお話でした。

こだわる

同好会の近況の話から、一緒にスクールアイドルがやれたらいいのにと振るエマちゃんに、断りを入れるシーンです。

賑やかなのは苦手なの。知ってるでしょ。

まあ、嘘ですよね。ストレッチのときに彼方ちゃん愛さんにも突っ込まれてましたが、嬉々として手伝っている様子を見れば、さすがに「苦手」はないんじゃないかと思うんです。一緒にやれそうな雰囲気を感じ取ったからこそ、エマちゃんは話を振ったんでしょうしね。

まあ、態度の話はともかくとしても、問題はここで同好会を形容している語が賑やかなことなんですよ。あれ? 皆でワイワイやるのが嫌いなのは、それが騒がしいからだ、と最初言ってませんでしたか。*1

この 2 語では印象がかなり変わってきます。所属するエマちゃんに気を遣って言葉を選んだのかなとも思いましたが、親友と呼べる間柄なら「騒がしい」くらいはそのまま使うんじゃないかなあ。特にここは否定する場面ですし。

となると無意識で使ってます? 後のシーンでは、実は同好会の手伝いが楽しいと思えるようになってきてたと告白してましたね。でも、ここでもうその気持ちが漏れていることに、果林さん気づいてるんでしょうか。

そして知ってるでしょ。それこそ、私はこういうキャラなの、ってことでしょうが――。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話

言い捨てるようなこのセリフは、寮で口論になったときにも口にしてました。「異論は認めない」という意味ですよね。相手をそれ以上自分の内に入って来させないための牽制。でも真にそうなのなら、本当に賑やかなのが嫌いなら、多分付け加える必要のない言葉です。突っ込まれると自分が揺らいじゃうから、先に投げている。

そう定めた「朝香果林」が正しいのだと思い込みたいんでしょうね。新しく生まれた気持ちは、自分にはそぐわないはずだ。だから認めたくない。なかったことにするために、自ら言い聞かせてるようにも見えます。

心はもう飛び出し始めてるのに、それでも決めた枠にはまろうと固執する様は、否定的な意味でのこだわりがぴったりだと思いました。頑なですね。

こだわ・る (動ラ自五) (1)心がなにかにとらわれて、自由に考えることができなくなる。気にしなくてもいいようなことを気にする。拘泥する。(三省堂 スーパー大辞林 3.0)

ここでは視線も外してるし、すぐに席を立って会話を終わらせるしで、エマちゃんにしてみたら不信感バリバリですよ。

エマちゃんの剛柔

果林さんの言動がちぐはぐで、どう捉えていいかわからなくなったエマちゃんですが――。

引っ張り出す

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話

アンケートの回答で果林さんの本心を確信して、彼女の下へ急行します。

来て。

でも対面していきなりは本題を振らないんですよね。まずはもう一つの願いを叶えるために、半ば強引に外へ連れ出すところが、心から相手のことを考えているエマちゃんらしい。

彼女の優しさにやられて、私は早くもここで撃沈でした……。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話

急に付き合わされることなって当惑していた果林さんの表情がだんだんほぐれ、笑顔になっていく様子は印象的でしたね。少しくらい気まずいことがあった後だって関係ない。気のおけない友人とワイワイやるのは楽しいですもの。食べ歩きいいなあ〜。*2

手を引く

そして、やっと本心を引き出せたところで、駄目押しにこのセリフですよ。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話

やりたいと思ったときから、きっともう始まってるんだと思う。

これでまず思ったのはエマちゃん自身のことです。子供の頃にアイドルを見て憧れて、自分もなりたいと思って。私もあんな風に歌って踊りたいなとか、それとももっとこんな風がいいかなとか、いろいろ考えますよね。小さい頃に見る夢はいいなあ。無限大ですもんね。

そしてその夢を温め続け、夢のままでは終わらせなかった。

実現させるためにはるばる日本までやってきた彼女は、スクールアイドルになったばかりです。でもこの言葉にはおもい続けていた年月と、遠くスイスからずっと焦がれていた距離が感じられるように思います。それまで夢想していたモノをやっと形にできるのですから。

その一方でこの言葉を向ける相手は、スクールアイドルに傾きかけてるけれども、できるかしらとまだほんのちょびっとだけ不安がる果林さん。今までずっとこうだと定めてきた枠から外へ出るのは、まずその第一歩を踏み出すのが怖いものですよね。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話
防御姿勢が解けるシーンが好きです。

そんな彼女にエマちゃんは「果林ちゃんはもう歩き出してるんだよ、だからそのまま歩き続けて大丈夫だよ」と、そっと手を引くわけです。

これ、もう! なんでしょうね!! 包み込むような優しさ? こんな柔らかくあたたかい言葉があるんだなあって。

根拠のないただの「できるよ」とは全然違う。やりたいと小さい頃に思ったことが今の自分に繋がっていると言えるエマちゃんだからこそ、その時の純粋な気持ちが今目指そうとしているスクールアイドルなのだと、その時があったから今こうしているのだと、そう言えるエマちゃんだからこそ強い説得力が感じられます。

中盤でエマちゃんは自分のスタイルを見つけるのに、まず形から入って模索してて、あれはあれで悪くなかったのですけど*3 ――人の心をぽかぽかさせちゃうアイドルの本質はこちらですよね。相手を思い、心で伝えるから心に響く。

少し驚いた後、納得する果林さんの笑顔もまた素敵でしたね。これこそエマちゃんが見たかった果林さんなのでしょう。

微笑み合う二人を見て、こちらの心までぽかぽかしてくるお話でした。

今週のどうでもいい話

小ネタなので Twitter に流して終わりにしてもよかったんですが、最後に少しだけ。

出典:アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」第5話

これ(卵かけご飯)、スイスに居たときからずーっと憧れてたの。

スイ、ス……? えでもこれイタ……、え? えっ? スイス? イタリア……? ?

はい、ぼーっと見てた私が悪いんです。でも頭の中がハテナでいっぱいになって、そこからの話が頭に入ってこず、少し巻き戻す羽目になっちゃいました。脳がバグるってこういうことを言うのだと実感しましたよ。

もう一つ。 

小さい頃、日本のアイドルの動画を見て、心がぽかぽかってなったことがあったの。

そう、小さい頃に見てたのは動画なんですね。ソースは TV*4 じゃないのか……。なんでもない場所で、ちょっとしたショックを受けましたとさ。

*1:アバンの、同じく食堂シーンです。ところで、冒頭では騒がしいのは苦手なのと言われてるのに、一緒に食べてもいい?と聞くエマちゃんは強いですね。

*2:エマちゃん、本当によく食べますね!

*3:クマ・ヴェルデかわいかったー。

*4:私も小さい頃にはアイドルを見て、わぁ!ってなったクチですけど、つべやニコなんてありませんでしたよ? いんたーねっと、とかいうのさえも……。