一度離れる <ラブライブ!スーパースター!! 第5話「パッションアイランド」感想>

どう感想を書いていいものか悩んでいたら、時間ばかりが過ぎていきました。情報量は少なくないのに今回のエピソードは確定しているものが少なく、取り上げ方に悩みます。

それでもやっぱり幼馴染組二人を中心に据えないとダメでしょうね。お話開始時点では、ちぃちゃんが居てくれるのが当たり前になっているかのんさんと、助力を惜しむつもりはなくても今の形態に疑問を持ち始めているらしき千砂都さんがおりまして、といった感じでしょうか。断片的になりますが、気になったことを拾っていきたいと思います。

かのんの見てるもの、あるいは見てないもの

かのん
ちぃちゃんも、いいよね?

かのんちゃん側で取り上げるべきはまずこのセリフでしょうね。Sunny Passion に誘われたとき、「ちぃちゃんも来てくれる?」と依頼するのじゃないところが、なんともはやです。コーチでもないのに、付いて来てくれるのは決定事項で一応の確認をしただけですものね。甘えてるなあ。

実を言うとですね、喫茶店の場面では、サニパが来る前のほうがもっと気になってるんですよ。これは穿ち過ぎだとも自分で思うんですが――。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第5話

他にお客さんがいないからか、ママンはお店を娘に任せていました。かのんちゃんの立ち位置はカウンターの中です。

私、全く同じ規模で、よく似た作りの喫茶店でアルバイトをしていたことがあるので分かるんですが、この位置ってお店がすごくよく見渡せるんですよ。意識が自然と店内全域に向くんです。お客さんのオーダーが決まりそうだとか、そろそろ会計だとか、たとえ作業中で視線を手元に落としていてもなんとなく分かります。

ですがそれはお客さんがいる場所だけなんですよね。それ以外の、たとえば母屋のほうの人の気配だったり、外の様子だったりには逆にすごく鈍感になります。*1 大雨が降っているのに、新しく来たお客さんがドアを開けるまで気づかないとか、普通にありますから。

さて、この店内にはカウンター内を除いて唯一、お客さんがいない(はずの)場所がありますよね。ええ、入り口脇、マンマルの前です。*2

経験則からですが、この「お客さんがいない場所」に立っているちぃちゃんは、かのんちゃんの意識の中からすっぽりと抜け落ちてます。テーブルとカウンターの「客」に気を取られていて、一切見えてません。

前述したように、ここまで考えるのはさすがに私の妄想だと思うんですよ。でも偶然にしてもあんまりな絵面に思えたんです。自分たちを見るのに手一杯で、付いてきてくれている幼馴染は顧みないだなんて、こんな形でちぃちゃんの扱いを見せなくてもいいじゃないですか。

まあ、かのんちゃんにしても、悩み続けていたことがなんとかなって新しい活動が始まったわけです。環境がガラリと変わった中で、変わらず隣に居続けてくれる存在がある。ありがたくも、安心して二の次三の次になってしまうのは理解できなくはない、かなぁ。それじゃダメなんですけどね。

そこにいるのが当たり前になりすぎてるから、考えられてなかったんだろうなとは思います。

居なくなって初めてわかるとはよく言ったものですね。今回、自分たちだけが離島へ行くことで物理的に離れてみて、やっと考えが及ぶようになったようです。遅きに失してないといいのですが。

隔たった「同じ場所」

ところで離島に行く彼女たちに関しては興味深い符合の一致があります。

ちぃちゃんは東京に居残り。でもかのんちゃんたちが向かった神津島だって東京都なんですよね。ちぃちゃんは海を隔ててずっと遠くに感じるのに、それでも「同じ場所」にいることになってるんです。*3 この状況って、どこぞの学校に近いものがありませんか。

結女には普通科と音楽科の間に大きな隔たりのあるのが徐々に明確になってきました。そもそも制服からして違いますものね。制服、ユニフォームには同じ集団に所属している一体感をもたせる意味合いもあるはず。校舎が分かれていて生徒が交わらない上に、制服まで別なのではとても同じ学校だとは思えません。*4

普通科のメンバー 3 人は、また音楽科のちぃちゃんは、この隔たりについてどう思ってるんでしょうね。

かのん
なんか。……ってよくない気がする。同じ学校なのに
すみれ
でもそういう学校でしょう。音楽科は特別、みたいな

今回、初めてメンバーから音楽科への直接的な言及があったような気がします。不公平感は覚えている様子ですが、すみれ(と可可)は諦めが入っているのかな。かのんちゃんは現状が正しくないと考えているようですけど、彼女の場合、試験に落ちた経緯から屈折したおもいを抱いていそうなんですよね。言葉通りに捉えていいものか悩むところです。

ただ、すみれさん? いくら個人を指すモノじゃないといっても、所属する人間のいる場で、愚痴のような言い方は少しばかり配慮に欠けるのではないかと思いました。かのんちゃんの考え込む様子がアップになってて、ちぃちゃんの表情は見えませんが……。

ここからは音楽科側の娘たちの話になるでしょうから、ずっと気になっていたこの隔たりにやっと切り込みが入るのでしょうか。花さん(恋ママ)周りもそうですが、何かスゴイものが飛び出してきそうで、少しばかり身構えています。

千砂都は何を思う

ちぃちゃんのお話はまだ見えてこないですね。かのんちゃんたちのサポートをしている以外の、自分の生活を送る姿が初めて描かれていましたが、一人でダンス練習に励む様子だけでは何を考えているかがよくわからない。(想像をふくらませるのは楽しいのですけどね。笑)

大会への打診を受けても保留にしてましたから、彼女の動きは Sunny Passion にわざわざ聞きに行ったところから始まるのでしょうか。初見では、本人たちではなく、なんでちぃちゃんだけがグループの実力を気にするのか不思議でした。

ダンス大会に出るにつけて自分が(どの程度)離れても大丈夫かを確認したかった。そんな辺りなのかなと想像しますが、それで返ってきた答えが、むしろいるほうが悪影響を与えかねないだとは完全に想定外だったでしょうね。いや、それとも薄々気づいていたのかなあ。

ちょっと脇にそれますが、この点で一つ、なるほどと思ったことがあります。

良し悪しは別にして、かのんちゃんがちぃちゃんに全幅の信頼を寄せているのは理解できます。すみれは斜に構えたところがありますし、特に加入したすぐでは全体の方向性に関して口を出さなさそう。となったとき、「ダンスにも自分たちの色を」と言うべきなのは、スクールアイドルへ人一倍情熱を燃やす可可のはずですが……。そういえば彼女、運動はからきしだったんですよね。猛特訓のおかげで踊れるようになったといっても、元が素人以下では、まだまだなぞるのが精一杯でしょう。彼女も無理、と。

結局この話はかのんちゃんに掛かってくるんですね。幼馴染間の問題がそのままグループの問題にシフトするようになってます。うまくできてるなあ。

話を戻しましょう。千砂都ちゃんは自分のことに比重を置くと決めたようですね。上記の答えを受けて決めたのなら、グループのことを思って距離を取ることにしたのだろうと思ったのですが、どうもそればかりでもないような気がします。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第5話

デジタルサイネージっていうんですか? サニパと別れた後に映る電子看板は気になりますよね。「献血に/行こう」、「STOP/歩きスマホ」、そして彼女が出る予定の「TOKYO SUMMER DANCE CHAMPIONSHIP」ですって。

一枚目については少し長めに取ります。献血は「自発的な無償供血」と定義されるそうです。自由意志で行うことと、見返りを求めないことが要件。非常に示唆的ですね。

今まで彼女のグループへの(または、かのんちゃんへの)関わり方がはっきりとしていませんでした。てっきり半部員扱いでコーチとして収まっているのだろうと思っていましたが、無償ボランティアの意識だったのでしょうか。もしそれで続けてきたのなら、かなりマズいと思うのです。

ボランティアは一方的な施しです。特定の相手に期間未設定で継続的にやるものではないんですよ。顔が見えている個人間で続けていると、お互いの関係がおかしくなります。妙な上下ができあがったりとか、もらえるのが当たり前になってくると逆に受け取る側が尊大になったりとか。*5 さすがに尊大なんて言いませんけれども、かのんちゃんはその後者に該当し始めてるんじゃないかなあ。

もちろん困ったときはお互い様ですし、貸し・借りという感覚でも良いでしょう。先のライブではどうしても結果が必要でしたから、ちぃちゃんが手を貸すのは悪くなかったのです。友人を助けられるのは喜びですしね。しかし、そのままコーチ的なポジションを続けるのであれば、おかしな関係にならないためにも、済んだ時点で一度立場をはっきりさせておく必要があったのだろうと思います。

続いて二枚目。歩きスマホ禁止は一度立ち止まれの示唆とも、二つのことを同時にやるのは危険の意味とも取れます。ながらスマホはついやってしまいそうになる行為ですけど、手の中の画面に注意力を全部持っていかれるので本当に危険ですものね。できると思う、その感覚こそがまず間違い。人間そんなに器用じゃないんですから、別々のものは個々にこなしていかないといけません。

という流れでダンス大会の案内が来るなら、これはやっぱりちぃちゃん側の話になるのだろうと思うんです。離れるのはグループのことだけを考えて、というわけではなさそう?

二人の間には

千砂都
私、かのんちゃんのできないことを、できるようになる
~、夢中になれるもの、私も持てるように頑張る

幼馴染二人の間にすれ違いがありそうなのは何が原因なんでしょうね。起点になるのは当然小さい頃のこの宣言でしょうが、二人が大きくなった今、それがどこまで生きているのでしょうか。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第3話

今回を別にすれば、ちぃちゃんが自分の希望を述べたのは一度だけです。第 3 話で可可に誘われたときにダンスが大事だからと断っていました。しかし、正対していた体を斜めに外し、手を隠したことを考えるに、本心からってわけではなさそうなのですよね。

かのん
私、可可ちゃんのためにも、スクールアイドルで結果出したい
そのためにも、ちぃちゃんにもメンバーになってもらえたらって

かのんはかのんで、ちぃちゃんに加わってほしいとは言ってますが、これはグループとしての希望ですね。一緒に取り組めたら嬉しいとか、もっと楽しくなりそうだからっていう個人的立場の願望ではありません。

二人とも気持ちを抑えてしまって、べき論で考えていそうな感じがするんですよねえ。幼き日の宣言がクサビになっているというか……。そうですね、「できないことを、できるようになる」で別々のことを始めたのはいいけれど、そしてお互いの原動力になったのはいいけれど、それが変容して「同じことをしちゃだめ」になっていそうな。特にかのんちゃんは語り口からそんな雰囲気を感じました。宣言は確かに尊重されるべきでしょうが、目的いかんによっては、その内容にこだわる必要がないのですけどね。*6 *7

一人は残って「夢中になれる」ダンスに専念し直し、また一人は遠く離れた島で幼馴染のことを改めて考えて。さて二人はどんな答えを出すのでしょうね。

――正直、そろそろ可可以外の娘たちにも頑張ってもらいたいところに思います。純粋な願望「やりたいから」で何かを始めたのが、今のところ彼女しかいないのは寂しいのです。

*1:私の能力が足りていなかっただけの可能性も否めませんが?!

*2:客席が無いことは確認済み。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第1話

*3:私も竹芝からさるびあ丸に乗り、離島へ渡ったことがあります。行ったのは手前の大島(伊豆大島)でしたがそこも同じく東京です。ひと晩かけて向かった先の、島の道を走る車が品川ナンバーなことに気づいて、とても奇妙な感覚に陥ったことを覚えています。

*4:さすがに無茶設定だと思うんです。やりたいことは理解できるんですけどね。

*5:施す側にも「やってあげてるのに」の意識が出かねないのも問題です。見返りを求めていなかったはずなのに。

*6:したがって、宣言に至った出来事をここで描写しないのはズルいと思うのです。

*7:二人の有り様って話なら、例えばそのまま別々になってしまってもいいんですよね。ちぃちゃんが合流する結末だけは知っている状態でお話を見ているので、こうした感想になるんだと思います。もう少し考えて、違う書き方をしたほうが良かったのかも。でも、かのんちゃんの口から個人的願望がまったく出てこないのは、やっぱり引っかかるところです。