波の干渉 <ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2期 第2話「重なる色」感想>

第 2 話はエマちゃん大奮闘でしたね。1 期 5 話お当番回でも同じように思いましたが、彼女は誰かのために一生懸命になっている姿がホント素敵です。そばにいる誰かの心をぽかぽかにさせてくれるアイドル。私もこんな親身に寄り添ってくれるお姉さんが欲しかったなあ。

この 4 人である必要性?

今回のお話はなぜ QU4RTZ 4 人で進行したのでしょう。ミモフタモナイ言い方をすると、ユニットありきの話だからの一言で済んでしまいますし、ストーリーの中ではただの偶然で済まされていましたが。笑 せっかくなので一つ屁理屈をこねてみようと思います。

まずお話の軸になっている嵐珠は、同好会に相対する存在として据えられています。キーとなるのがそのアイドル的スタンスで、「個としての立脚」、「何も求めない」とかそんなところ。ステージの上で表現することで力を示し、与えるだけ与えて返ってくるものには期待をしない。むしろ受け取ることはマイナスになると考えている。

同好会がその逆を行くとなると、強調すべきはもちろんファンから返ってくる応援を取り込んでいる点でしょう。

あるのは「自己表現のみの嵐珠」 v.s. 「ファン(他者)とのつながりも含む同好会」*1 という構図です。

そこでです。同好会の活動を「自己表現-つながり」の対になる項目軸で見た場合、この 4 人はステージに立つ理由が比較的後者重視のメンバーと言えるんじゃないかと思うのです。

エマちゃんは前述の通りですし、璃奈ちゃんは言わずもがな「つながる」を前面に押し出しています。かすみんが可愛いを発信するのは一つには称賛を求めるから。彼方ちゃんは、ちょっと迷うのですが、ステージ作りが特徴的で、客席含めて全体を巻き込もうとしていることを思うとこっち寄りかなあと。

本来なら愛さんも in なのですが、彼女の場合、第 1 話の最後で嵐珠に売られていた挑戦を面白がって買ってるんですよね。フェスで対バン(?)できることを楽しみに、嵐珠を好敵手だと見ている様子です。だとすると今回の話の流れには乗りにくんじゃないかな、と考える次第です。……無理がありますかね?*2

ともあれ、交流を重視するメンバー 4 人。他者との関わりを排除して考えている嵐珠にぶつけるには、なかなかいい人選だと思うのですよ。*3

ミアちゃん、栞子さんの立ち位置

また、今回のお話では 2 期になって登場したミアちゃん、栞子さんの様子が少し描かれていました。

ミアちゃんが目立つのは才能の特質性と素っ気ない性格ですが、それだけじゃない面も垣間見えたように思います。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より
ミア
Hey, kitty.
ほら、怖くないよ

同じように高い才能を備えた女の子でも、陰のなかに登場するミアちゃんは嵐珠とは対照的に映ります。

校内で一猫(ひとり)悠々とお散歩役員の仕事に勤しむはんぺんに、彼女は何を思って話しかけたんでしょうね。はんぺんは見慣れない人間を怪訝そうに観察していただけだと思うのですが、ミアちゃんは怯えさせてしまったと感じたのかな?

「怖くないよ」はごく普通の言葉だと考えられなくもないですが、ここに彼女が周りに築いている壁のようなものが透けて見えるような、見えないような。そんな気がします。はんぺんの気持ちをそう推察したってことは、彼女にとって周りの人間は怖い存在なのかなあとか。考えすぎでしょうか。

栞子さんは精力的に働いていましたね。前回はオープンキャンパスの実行委員会でしたっけ。で、今度は文化祭実行委員ですか? その原動力がどこにあるかはわかりませんけれども、人のために尽くす様子が見て取れました。

二人は今の筋からは外れているので、本当にまだ顔見せ程度です。でも上手いなと思ったのが、両者のついでにしっかり嵐珠の描写が補強されていたことでしょうか。

ミアちゃんとはビジネスライクな付き合い、というよりはもっとドライでお互いに利用し合うだけの存在のようですね。

栞子さんは幼馴染との説明がありましたが、嵐珠は(頼って日本にやって来ておきながら)始めたアイドル活動を彼女に見せようとはしてないのですよね。ここでは、栞子さんを次のライブに誘う歩夢が印象的に映りました。嵐珠と同好会との違いがこんなところにも現れています。

そう考えると、愛さんがミアちゃんにはんぺんの餌やりを誘っていたのも、嵐珠との差異なのかもしれませんね。

嵐珠は独りで立とうとしてて、実際にできてもいるのかな。一番近いと思える二人からもかなりの距離を取ってやっていますものね。孤立しているのとは毛色が違いますが、独りなのはやっぱり寂しく思えるかもしれません。私が同好会目線だからかなあ。

嵐珠のお家のシーンでは、エマちゃんがトレーニングメニューを見つめていましたよね。独り黙々とこなしているランジュちゃんの様子を想像していたんじゃないかと思うのです。

振り子の同期

他にもお家のシーンで述べたいことはあるのですが、ヒートアップするショウ・ランジュと 3 人との口論についていけず一人おろおろしていた贔屓が相変わらす可愛いとか、そんな話に始終してしまいそうなので端折りまして。後半のシーンに飛びましょう。

QU4RTZ といえばブランコが付き物(?)です。今回の話でも象徴的に使われていました。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

件のシーンで 4 人の漕ぐ振りが同期したのは、皆の気持ちが一緒になったから? さすがにこれは演出の狙いすぎじゃないかと思います。笑

それでも私は、振りが揃ったのが偶然じゃないところに意味を見出したいと思うんです。

振り子の共振はよく知られた話です。長さが同じ振り子を二つ、一本の棒に並べて下げて片方だけ揺らすと、その振動がもう一方の振り子に伝わり、そちらも同じように揺れ始めます。

このシーンのブランコは、複数の振り子が同時に、バラバラに揺れ始めたパターンと言えます。モノがちょっと変わるのですが、メトロノームではとても面白い現象が見られまして――。

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揺れる台の上に多数のメトロノームを並べ、それぞれを適当に動かすんだそうです。そうするといつの間にか振りが同期してしまうのだとか。不思議ですね。お互いを励振しあう(揺らしあう)ことで個々の位相(振りのズレ)が少しずつ矯正され、最終的にすべてのメトロノームが同じタイミングで頭を振ることになるようです。

もちろんブランコではこんな現象は起こり得ないでしょう。ですが今回の話を見て、すぐにこの実験を連想してしまいました。

公園のシーン、最後には彼女たちの思いが一致しましたが、それはただの偶然ではありません。

4 人ともそれぞれに考えていることがあって、最初の段階では意見としてまとまっていませんでした。話し合っているうちに、お互いの思いが影響しあい、少しずつ意見の方向が定まる過程がそこにはあるんです。そしてびたっと一つの思いに至る。

意見が自然とまとまっていく様子を「励振しあうブランコの振り」になぞらえることができるのかなって。なんだか美しいなと思ったのです。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

また、深掘りする話題じゃないので一言で終わらせますが、同じく QU4RTZ に付き物のコーラスも音波の干渉現象ですから振動に関わる話ですね。ブランコから練習場面へ、直にシーンが切り替わったのは連想がはたらいて好きです。

嵐珠への挑戦

さて、どういう形で嵐珠に答えを叩きつけるか、彼女たちのやることは決まったみたいです。嵐珠には出向いてもらわなくちゃいけませんから、その連絡を……って掲示物に私信*4 とはずいぶん迂遠な手段を取りますね。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

栞子さんあたりを捕まえて聞けば連絡先は手に入るでしょう。電話なりメッセアプリなりで直接伝えれば確実なのに。それをしないのですね。

ポスターを張り出す時一緒にメッセージを添えたのならまだ分からなくもないかなあ。ですが実際は日を空けて後で追加してますから、もっと確実性に欠けます。

嵐珠がすでにポスターを見ていた場合、内容を把握しているからと以降は注視しなければ、多分このメッセージには気づかないと思うんです。その可能性をエマちゃんは考慮しなかったのでしょうか。

きっとランジュちゃんが見てくれると信じてた。いや、むしろ知っていたんじゃないか。私はそう思います。

エマちゃんが、そして最終的には 4 人がおせっかいを焼こうとするのは、嵐珠のコトバに嘘があるように思えるからです。引っかかる点は数あるでしょうけれど、まず最初にあるのは、彼女が自分たち同好会のことをとても気にしているということ。

そのやり方を情けない(だから一緒にはやれない)と本気で思うのなら、もう同好会なんて気にもとめないはずなんです。それが、どー見たってまだ気にしているように思えて仕方がない。エマちゃんも言っていたように、嵐珠の出発点からして同好会のフェスですものね。

この「気にしているっぽい」を根拠に、エマちゃんはお節介を焼こうと決めたわけです。

もしここが間違っているなら、疑ってる嵐珠の本音なんてものは存在しないことになるのかな。少なくとも 4 人がやろうとしていることは崩れてしまいます。逆に推測が正しければ、そこを突くことで本音を引き出すきっかけにできると。ということはその答え合わせが、嵐珠が向き合ってくれるかどうかのリトマス試験紙になるはずですよね。

彼女らは、ポスターに張り出すだけという確実性に欠けた連絡方法を取りました。これってちょうどこの試験紙に当たるじゃないかと思うんです。

嵐珠がメモに気づかなければどの道それまでですが……。エマちゃんたちは「嵐珠が同好会を気にしている」前提の上で動いています。ってことは、ランジュちゃんは何度だってポスターを眺めてくれる「はず」なんです。「気になってるグループ」のイベントってすごくワクワクしますものね。告知を一度見てフーンで終わり、なんてことにはならないでしょう。

ランジュちゃんは「きっと」見てくれるのだから、一見不確実なこんな方法で十分なのです。

いえ、考えてみれば何もしなくても彼女は合同ライブを見に来てくれるはずなのだから、メモを残す必要もないのかも。あえて不確実な方法をとっていることこそが、嵐珠に対する挑戦と言えるかもしれません。「私たち、知ってるよ」というメッセージですね。

はたして嵐珠がこのメモに気づいたということは、エマちゃんの推測が当たっていたと証明されたわけで、もう嵐珠が負けかけているように思えます。この孤高のアイドルはメモを手に取り微笑んでいましたけれども、その事実に気づいているのかなあ、なんてことを考えた第 2 話でした。

そう言えば、嵐珠は同好会のやり方を否定してはいますが、同好会そのもの——メンバーだとかパフォーマンスだとか——をダメだとは言っていないんですよ。ここにもちょっとした違和感がありますね。彼女の中で整合性がどうなっているのかも気になるところです。

今週の二番贔屓

最後に一つ。個別事情なので本筋とはまったく関係ないのですが、これは拾わざるをえないですっ!

公園のシーンでかすみんがちょっとイイコトを言ったのを受けて、璃奈ちゃんがすべり台すべり下りてエマちゃんに抱きつきに行ったんですよ!?

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 2 話より

かすみんの言う、いろんなアイドルが居られる場所というのはニジガク同好会の強みの一つです。嵐珠ホームでも話していたように、同好会は璃奈ちゃんにとって自分と自分のやり方を肯定してくれる場所でしょう。かすみちゃんの言葉にはもちろん賛成です。

ですが他の二人が同意の返事をしたのとは違って口で言わず、ただひっつきに行ったんですよねえ。

感情がなんとなく言葉にならなくて、でもそれを表したい時ってあります。抱きついて甘えることで伝えたいのは、嬉しさだとか感謝だとか、場合によっては寂しさだとかでしょうか。この場合の璃奈ちゃんは同意と嬉しさあたりを表したいのかな。

で、言葉にしなくとも気持ちが伝わるとわかってるのが、なんだか嬉しくってですね……。

思いが伝わらないことをずっと不安がっていた少女とは思えないですよね。この娘、ほんの数ヶ月前までは伝えたい言葉さえも飲み込んでいたんですよ。それが今は逆に言葉を必要としないとは。

それだけ同好会の皆んなとの結びつきが強くなっているってことでしょうし、あえて上からの物言いをしますが、こういった成功体験が璃奈ちゃんの更なる前進に繋がって行ってくれるのだろうと、私は期待するんです。

頑張ってるなあ。

*1:同好会側で物語を見ているので、嵐珠に対して表現がキツめになっているのは容赦してください。

*2:実は彼方ちゃんも挑戦を買っているので、この論理展開には確実に無理があります。彼方ちゃんって実は色々見ていて気を使う性格だから、嵐珠におせっかいを焼きにいく話と親和性が高いとは思いますが。

*3:「理屈と膏薬はどこへでも付く」とはよく言ったものですね。笑

*4:かじられた食パン型の付箋も、添えられたイラストもかわいい!

二つの言い訳と開いたカーテン <ラブライブ!スーパースター!! TVアニメ2期 第4話「科学室のふたり」感想>

ちょこっと残しておきたいことができたので、部分的にですがスーパースター!! 2 期の感想を書き留めておきたいと思います。

米女メイ

メイちゃんは、スクールアイドルにどっぷりハマっているにもかかわらず、向いてないから自分でやるのは無理だと言います。

ただ屋上でのやり取りを見れば、やらない理由「向いてない」は方便だと分かる。

アニメ「ラブライブ!スーパースター!! 2 期」第 4 話より

スクールアイドル活動を始めたらそっちに時間を取られ、科学室から足が遠のくのは必然です。そうなれば四季を一人ぼっちにさせてしまう。それこそがやらない理由の本命で……? という話の流れだったように思います。

これを、親友のことをおもうメイちゃんの気持ちだと考えるのは悪くないですよね。「向いてないからやらない」は、四季を一人にさせないための “言い訳” だと。彼女の優しさが現れています。

しかしこれって逆も言えるんですよねえ。「四季を一人にさせない」は、アイドルを諦めるための口実だとも。

メイにはまず、「私にアイドルは無理だ」があって、その “認めたくない事実” を呑み込むために言い訳を探してきたのだとも取れませんか。だとしたら、ちょっといただけません。

例えばの話ですが、主張するのが「(私が)四季と一緒にいたい」「過ごす時間をもっと大事にしたい」等であれば、これはメイちゃん本人の願望ですから構わないのですよ。やりたいことの優先度の問題であって、アイドルをするにしても親友と一緒に居るにしても、どちらを選ぶも彼女次第でしょう。外野がとやかく言える話ではありません。

ですが、やりたいことを “我慢” する理由に他人を持ち出してきて、オマエのためだからと言うのは……私には傲慢が過ぎるように思います。

そりゃあ四季も怒りますよ。

四季はずっとメイを見ていて、そんなにやりたいならさっさっと入部すればいいのにと思っているわけです。なのに、グダグダ言ってやらないだけならまだしも、自分がそのダシに使われたら、たまったもんじゃないでしょう。「一緒にいてなんて頼んだことない」とキツい台詞が飛び出すのも頷けます。

そうですね、この見方は四季視点からの物語の切り出しですから、メイちゃんには厳しめに当たっています。でもこれくらいのほうが最後のシーンの台詞が映えると思うんですよね。

メイ
四季が近くにいてくれたら、頑張れそうな気がするんだ

四季は、好きなことを諦めるための言い訳だったはず。それが変化して、今度は好きなことへの扉を開く勇気になる。今回の米女メイの物語ってそんな感じなのかなあ、などと考えるのです。

若菜四季

四季は感情が表に出ないようで、出ているようで、でもやっぱり読み取りにくいように思います。実際彼女の心の内ってどうなっているのでしょうね。

彼女の居室はカーテンが引かれていて常に薄暗い感じなのが印象的でした。しかしすべてが閉じられていたわけではありません。カーテンは一部開いていました。そしてそこから覗けるのが屋上。タブンこれは一つの記号ですよね。

科学室でカーテンが開いていたのは、もちろんメイちゃんが屋上の様子を見るためです。それでもこの場所は四季のホームと捉えるべきでしょう。

つまり、「四季の部屋のカーテン」を「メイ」が「屋上に向けて開けた」。

親友の影響でアイドルに興味を持った彼女をそのまま表しているんじゃないかなあと思うんですよね。

一度は拒絶してメイちゃんが科学室に来なくなっても、彼女はカーテンを閉めていませんでしたものね。開けてあるのは親友のためだけじゃなくなっていることの現れでしょう。

アニメ「ラブライブ!スーパースター!! 2 期」第 4 話より

また、部屋に関してはカーテンだけじゃありません。「開いていて外とつながる場所」が彼女の居室にはもう一箇所ありましたよね。そう、メイちゃんが入ってくるドアです。

あまり野暮な指摘はしたくないのですが……。このドア、同じく最後のシーンでやっぱり開けっ放しになってるんですよねえ。メイちゃんにはもう来るななどと言っておきながら、ね。

彼女の見る先はどこなのだろう <ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期 第1話「新しいトキメキ」感想>

やっっっっと「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 TV アニメ 2 期」を見始めました!

ので感想を書き散らしていこうと思います。シリーズはとっくに最終回を迎えているというのに、大遅刻も大遅刻ですね。一応一話ごとの投稿にしようと考えていて、第 1 話しか見ていない状態で今これを書いています。

ただ——シーズン中や放送後もネタバレに触れに行くことは極力避けてはきましたが、嫌でも目に入ってくる情報があって大体の話の流れは知ってしまっているのですよね。純粋な話数ごとの感想にならない点がちょっと残念です。

作品を楽しむだけなら、私、ネタバレは全く気にしないのです。でもこうして小出しにアウトプットをするときに足枷になるんですね。ならば通しで見て全体の解釈なりを出せば良さそうなものですが……、それは上手くまとめられそうにないかなあ。個々の場面にテキトーにツッコミを入れる形での感想とさせてください。

言い訳はともかく、第 1 話の内容に入っていきましょう。

導入

まず劇中のプロモーションビデオが、そのまま物語の導入になっているのが面白いですね。

これを単純に第 2 回 SIF 用の PV だと見ると、非アイドルの侑ちゃんをセンターに配置する意義を図りかねますか。ですがこれは 2 期のツカミです。劇中作と見せかけてその実、視聴者へ向けてになっているのかなって。似たようなのは他でも見かけますよね。*1 賛否分かれるやり方なのかもしれませんが私は好きです。

イメージビデオにして 1 期のあらすじ代わりに放り込んであるのが上手いなと思いました。各メンバーのエピソードは独立していましたから、まとめてダイジェストにするのは難しいでしょうから。

また映像の入りが 1 期の第 1 話オープニングと同じ作りになっているところを見ても、意識して作ってあるのがわかります。

1 期の頭と同じといえば、お隣さん同士の朝の描写もでしたね。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 1 話より

例えば、侑ちゃんが夜遅くまで作業してそのまま寝てしまえるのは、翌朝はちゃんと幼なじみに起こしてもらえるからです。甘えていますよね。笑

ずっとべったりだった侑と歩夢は、1 期終盤で別々の目標に向かって歩き出すことを決めました。でもそれで二人が全く別の生き方をするわけじゃありません。変わる二人の関係の中にも、依然変わらないものだってたくさんあります。

朝の様子はそのうちの一つなのでしょう。導入部でこうして変わらない二人を見せてもらえるとなんだかほっとします。虹の世界に戻ってきたんだーって、そんな気分になります。

侑ちゃんの姿勢

さて、2 期でまず最初に描かれる物語の柱は、侑ちゃんと嵐珠のスタンスの違いでしょうか。「やりたいこと」をやっている二人が、それぞれどう成し遂げようとしているのか。

侑ちゃんは自分の夢を追うだけでなく、その夢を与えてくれた場所、スクールアイドルにも関わり続け、何か還元できるモノはないかと模索しています。いわば二足のわらじを履いているわけですね。

で、そこを嵐珠に指摘されていましたね。自分の夢があるならそっちに専念すべきじゃないかと。

前シーズンは侑ちゃんが自身の夢を見つけたところで幕を閉じていました。ならばこの嵐珠のセリフは、シーズンが改まった今、最初に来るべき当然の指摘だと思います。

夢を追いかけている人を応援できたら……。 私も、何かが始まる。

1 期冒頭で侑ちゃんはそう言っていましたものね。1 期全体を彼女のお話として捉えるなら、「私」にも始まるその何かを探し求める物語でしょう。スクールアイドルを応援していたのはそのための手段だとか “つなぎ” だと見ることもできます。(言い方がちょっと意地悪かな?)

ともあれ、その何かは見つけられたんだよね。じゃあスクールアイドルの方はどうするの? 問題提起としては妥当ですね。

「見つけた夢を追います。スクールアイドルは、さいならっ!」 ……ではお話が終わってしまいますので(笑)、侑ちゃんには是非アイドルの応援を続けてもらいたいところです。何かを見つけたからといって、必ずしも別の何かを手放さなきゃならないってわけではありませんから。*2

でも「やりたいこと」が二つ。体が一つしかない以上、両方ともを 100 % ずつで追うのは無理です。折り合いをどうつけるか、または融合させるような形でも構いませんが、その答えを出すのがお話の軸の一つになるのかなあ。

「夢」のほう、転科先ではいささか苦労しているように見てとれましたが、それでも嵐珠に啖呵を切った様子からは侑ちゃんの芯を感じられましたね。これからの展開に期待です。

嵐珠のほうは

一方で嵐珠はわかりやすい。目標に向かってただまっすぐに。

感銘を受けたものがあれば即その世界に飛び込んで自分でも手を出すし、やるからには当然一番を取りに行く。そんな感じでしょうか。

まず自分で動きたい娘なんでしょうね。人の応援などでは気が済まない。

私などはその不器用さも相まって、自分もすぐにやってみるという発想には至らないのですよ。やらない理由を探しちゃう。侑ちゃんに出会ったときにも同じことを思いましたが、嵐珠の行動力もホンット羨ましい。新しいことを始めるにあたって、つきまとう不安などより期待のほうが断然大きいんでしょうね。

そして彼女は自信家。……と言いたいところですが、その自信を裏打ちするモノのほうが大事ですね。ストイックさかな。目標を明確に定め、やるべきことを把握して、それに向けて努力を怠らない。

一切妥協していないから自分を信じられるし、その自信がパフォーマンスにも乗って現れるのだと思います。「私は完璧」だと言い放って圧倒的な存在感を見せつける姿はカッコよかったですよね!

そう、嵐珠は歌に入る前口上からもうイイんですよねぇ。

スクリーン前に立った彼女は中国語でホール中に呼びかけていました。母語は他でもちょくちょく出ていますが、ここは短いながらも何かしらの中身を伴う文でしたね。簡単な挨拶などとは違います。いきなり呼びかけられても何を言っているのかさっぱり解らない。

でもいいんです。こっちに理解はできない言葉で、でも彼女が自信たっぷりに述べるから意味があると思うのです。*3

圧倒するとはこういうことを言うのでしょう。話している内容はわからないのに意識を持っていかれるんですよね。傾注させられてしまいます。嵐珠は理解した上でやってるんだろうなあ。聴衆の捕まえ方をよく知ってますよ。

Eutopia

お約束の領域展開から始まった「Eutopia」は、”圧倒的に stunning” の歌詞が示すとおり、観客の目と耳とを奪ってその彼女の世界に引き込んでいきます。

私も思わず息を飲んだのです。でも圧倒されると同時に、どことなく寂しい印象を受けて不思議な気持ちになりました。

どうにも、彼女が歌っている相手の顔がよく見えないからかな? 具体像がよくわからない。

your heart を高く連れて行く、ドキドキをあげる、射抜いてあげるなどと歌ってても、その対象が「歌い手=嵐珠」にとってどんな存在なのかが全然見て取れないんです。一方的に与えるだけで、逆に受け取ろうとするものが何もないから。

嵐珠
でも与えるだけでいい

ホント相手には何も期待していないのですね。

広く与えてその対象を選ばないのは、力を持つ者として正しい姿勢なのかもしれません。しかし「誰だっていい」とまでなってしまうと少し事情が違うように思います。

期待しないということは、相手に関して一切の頓着をしないということ。与えるだけ与えてあとは投げっぱなし。どんな人なのか知ろうとしないし、何をやっているかもどうでもいい。そんなふうになってしまいませんか。

MV では他の人物が黒塗りで登場していて、なおかつ嵐珠とは視線も合わない様子だったのが印象的でした。曲の途中、ホールに居るはずの観客の様子が映されなかったのも同じ意図かなあ。

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 1 話より

また他にも気になったのが、「孤城から見る景色/知っているの私だけね」のフレーズです。大切なもののように歌いながらも、それを「あなた」に見せてあげるってわけじゃないんですよね。続くセリフで「それだけ私が完璧ってことなのよ*4」みたく言ってはいますが、結局のところ一人であることを確認するだけのくだりです。

「孤城」がキーワードなんでしょうか。

中国語発音だったので念のために機械翻訳にかけてみたら「孤独な街」と出てきたんですよね。中国語は門外漢なのですけど、どうやら中国語の「城」は日本でイメージする城そのものでなく、周りの城下町も含めて「城」なのだとか。城壁で囲まれている街全体を指すみたいです。*5 ここではその意味で捉えちゃっていいのかな。

日本語の孤城も寂しい印象がありますが、こっちはそれ以上のモノに思えます。街だから一通り揃っていて外から必要とするものはない。つまり内側だけで完結する世界なのですけれども、そこに居るのは一人だけ。そして誰を連れてくるってわけでもない、と。

荒涼とした街中にぽつねんと立っていることを想像してしまって、孤高というよりはむしろ孤独という単語が思い浮かびます。

そうですね。ランジュ、確かにあなたはスゴイ。完璧で一番なのかもしれません。でも、ならどうして殊更に完璧だ、一番だと強調したがるんでしょう。

「Top of the world」のフレーズを聞いて、ふと私の頭に思い浮かんだのがカーペンターズの同名の歌でした。あちらは愛する人と一緒にいられる喜びを歌った曲です。何を見ても何を聞いても幸せに感じられて、そのあふれ出る嬉しさを詩にのせた歌ですね。それと比較してしまうからか、彼女の言う「世界の頂点」はどうにも空虚に聞こえるんです。

実際彼女には一番だと言い張れるだけの実力があるので、虚勢とまでは言いません。でも多少無理をして強がっているようにみえます。

力があるなら、それを見せつけてどっしりと構えていればいいのです。比肩する者はいないのでしょう? なら一番であることをそう何度も主張しなくていい。だって人が見ればそれだけで凄いのはわかるのですから。

なのに再三繰り返すのは、それしか拠り所がないからなのかしら。そんなことを考えてしまう歌でした。

矛盾

相手を見ていないに多少関連して、曲以外にも気にかかることがあります。

嵐珠は自分に厳しいですよね。そして人にも厳しい。侑ちゃんにわざわざ苦言を呈したのはタブンそういうことでしょう。夢を見つけてやるべきことがあるなら別のコトにかまけてる暇なんてないんじゃないのと。

たとえ他人であっても頑張っていない(ように見える)のが我慢ならないんでしょうね。自分はもちろんのこと、人にも強い独立性を求めるんだろうなあ。

ですがアイドルは夢を与える存在だとも言っています。この二つは矛盾するように思えるんです。

夢を与えたら、ファンが夢を見つけたら、そのファンはどこに向かうのでしょう。自分の夢だけを追いなさいと主張するなら、彼らは結局嵐珠の下から出ていくことになりませんか。そのことについてはどう考えているんでしょうね。

注目を浴び、ファンを沸かせても、すぐに離れていってしまう。

その先に作り出すモノがないように思えます。外には何も求めず一人で完成してしまっているって、そういうことなのかもしれません。もしそうなら寂しいですね。

それでもカッコイイ

それでもです。やっぱり嵐珠は格好いいと思うのですよ。

最後のシーン、9 対 1 でもまったく引けを取ってませんでしたよね。自分の哲学に筋が通っているから自信にあふれていて。一切揺るがないところが本当にシビレます。(その自信を私にも少し分けて欲しい。><)

人数差にもかかわらず嵐珠がずっと強く見えるこの図が好きなんですよ。侑ちゃんとの身長差、遠近法、柱の陰などの効果がうまくはたらいてるなって。良くないですか?

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 1 話より

さて、同好会とは物別れに終わった後、嵐珠のこの先の話は……大筋では知ってしまってますが、実際に彼女がどう動いていくのか気になりますね。”ここから始まる全て” を楽しみに視聴していこうと思います。

Y.G. の生徒

最後に TMI(Too Much Information/どうでもいい情報)を一つ。

スクフェス転入生組では甘口カレーアイドル・ラクシャータちゃんが私の贔屓です。やわらかい笑顔の虜なんですよ。出ているとは聞いていましたけど、動いているのを見るとやっぱり嬉しい!

アニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2 期」第 1 話より

*1:例えばサンシャイン!! 1 期第 13 話、MIRAI TICKET 前のくだりはそうだと思っています。

*2:どこかで聞いた歌詞のもじりですね。

*3:英語字幕は “All eyes up here! Or you’re going to miss out!” となっていました。字幕 on で見ていたので初見で意味が頭に入ってきてしまって、これは失敗だったなあと。

*4:英語字幕で出ていたものを和訳しただけです。元の中国語の正しい意味を取れているかはわかりません。

*5:参照したのが主に wikipedia なのであまり誉められたもんじゃないですね。