始まった <ラブライブ!スーパースター!! 第2話「スクールアイドル禁止?!」感想>

認めない生徒会から始まる物語は我々にとても馴染みのあるものですね。笑 テンプレは端折れる要素が多いからでしょうか、スピード感のあるエピソードに感じられました。あとは旧作との差別化がどうなるかかな。ちょっと学校側に怪しい雰囲気を感じのですが、はてさて。

かのんちゃん

始まった私

かのん
このまま終わりが続くんだなって思ってた
でも、やっと始まった
次の私が、始まった!

朝、自室で陽気に歌っているところから始まって、家族に挨拶をし朝食も摂り、視線を上げて登校する。ここまでがアバンでしたね。

第 1 話のアバンも全く同じタイムテーブルで始まっていましたが、暗い部屋でやさぐれ、挨拶も渋々に朝食は摂らず、外界を遮断して家を出る。この対比はたった 1 日でかのんちゃんが大きく変わったことを如実に表していました。

それまでの終わった世界から新しい私へ。ただ歌えることが彼女にとってどれほど重要な意味を持つのか分かるというものです。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話
かのん
スクールアイドル。ここでなら私も歌えるんだ!

この言い方から見るに、まだスクールアイドルには入れ込んでいない感じでしょうか。彼女にとっては何をおいても歌が一番で、スクールアイドルはそれを実現するための手段に過ぎないような。やっと見つけた大事な一つだから意識はしているようですが――。

今までのアイドルたちは、その程度に差こそあれ、スクールアイドルへ興味を持った状態から始めていたように思います。中には「友人が始めるから」などの理由でアイドルになった娘たちもいますが、一切興味がなければそうはならないはずです。

ではなく、かのんちゃんの場合は歌いたいがまずありき。で、そのためにたまたま見つけたモノをやってみよう、となっていますよね。目的の持ちようが明らかに違う点で異色です。*1 でも自らの好きなものへ真っ直ぐ向う姿勢はとても好ましくもあります。

かのん
それに私、本気でちょっとスクールアイドルに興味があるの

そんな彼女の中でスクールアイドルがどう意味をもつようになるのか。これからですかね。

歌えなかった歌

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話

♪ 高い高い あの空は

どんな風が 吹いてるの

緑萌える 丘の先

レーニング中に聞こえてきた歌は音楽科か合唱部のコーラスでしょう。かのんちゃんが小学校のコンクールで歌えなかったものと同じでしたね。

あのとき歌うことができず、音楽科に落ちた今も歌うことのできない歌。

ずうっと高いところにあって、今なお見上げなければいけないのですが、少し前までと違う点がかのんちゃんにはあります。確かにまだ高い場所にあるけれど、今ならその高さに手が届きえるんですよね。

新しく始まった彼女はその高さに到達しようと懸命です。彼女がここで気合を入れ直したのはもちろん、「あきらめないキモチ」とつぶやきながら曲作りに励んだのも、多分歌声が聞こえてきたからでしょう。高い空に吹く風を自身で感じてみたいですものね。

このあと曲作りのシーンへ移る前に一度恋ちゃんを挟むのですが。恋がスクールアイドルの画面を閉じたのと入れ替わりに、かのんがドアを開けたのが非常に示唆的で印象に残りました。自分の進む道としてスクールアイドルを意識しはじめたタイミングになるのかな。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話

大事にする

かのんちゃんについて細かい点は他にも色々あるんですが、もう一つだけ。

かのん
可可ちゃんからもらった言葉、大事にして曲を作ってみるね

詩をベースに曲を作るにはその内容を理解しないと始まりません。中国語の意味を調べるべく、かのんちゃんは辞書を借りに行って――。

おお! 自力で訳すんですね。お父さんの専門が中国語なのか明言はされていませんでしたけど、仕事用に辞書を揃えているなら「それなり」以上にできるはずです。文の意味を知りたいだけなら頼んで訳してもらったほうが余程早いし正確。でもそれだと足りないんですよね。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話

訳文には翻訳者の解釈が入るため、原文とは違うニュアンスになっていることが多くあります。*2 そもそも訳せない言葉もありますし、いくら良くできたものでも訳文は訳文。原文とは別物です。これは私も英語の対訳を読んでいてよく思います。

かのんちゃんは「可可ちゃんの言葉」を元にしたいわけで、それなら直に原文を当たりにいくのは納得できる話ですね。相手を直接知っていて、彼女のスクールアイドルに対する熱いおもいを理解していることも重要なポイントだと思います。その言語に長けているだけの人より素敵な訳ができることもありますから。

また、たとえ訳としては劣るものになったとしても、教わっただけとは解像度が違ってきます。訳ではこぼれ落ちてしまうちょっとしたモノがちゃんと見える。きっとそれが曲作りに、歌に影響してくるんです。

大事にするってそういうことなんですね。「もらった」という語をわざわざ挟んでいることからもそれが感じ取れます。

(「可可ちゃんが困ってる」からで色々とはたらきかけるところも友人の気持ちを大事にする美徳だと思ったのです。でも……それだけ人の気持ちを大事にできるなら、一緒にやるのは無理と決めつけないで幼馴染の声もちゃんと聞いてあげてー *3

ちぃちゃん

かのんちゃんとの距離

千砂都ちゃんはダンス、かのんちゃんは歌。小さい頃から一緒にいても、打ち込んでいるものが別々だからか二人は程よい距離を保っているような印象を受けました。少なくともべったりではなさそうですよね。

千砂都
でも、私はかのんちゃんの歌、聞いていたいけどな (第 1 話より)

好きだったのが第 1 話のセリフです。歌を諦めると言うかのんちゃんに、「そうなんだね」と受け入れるでも「続けなよ」と意見するでもなく、「続けてくれると私が嬉しいな」とエゴを伝えるに留める。この塩梅って難しいと思うんです。押し付けがましくないのに、支えてくれているのが確かに分かりますよね。

ちぃちゃんは、かのんちゃんの歌が好きなのはもちろんでしょうが、それ以上に親友が楽しそうに歌う姿を見ていたいのだろうなとも思わせるセリフでした。

かのん
ちぃちゃんのダンスは小学生の時から評判だったんだ

また本エピソードではかのんちゃんがこんなコトを言っていました。仲の良い友人が評価されるのは嬉しいもの。自分に関係のない事柄でも自慢したくなるのはよく分かります。

これって多分逆の立場からでも「真」ですよね。ちぃちゃんとしては「かのんちゃんの歌は小学生の時から評判だったんだ」とずっと言いたかったと思うんです。大事なところでうまく行かず、歯痒い思いをしていたのは本人だけじゃなかったはず。自分が手を出せない分野ですしね。(明るい性格*4 ゆえか、その様子は見せていなかったようですけれども)

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話

だから、かのんちゃんが歌えるようになったのはとても嬉しいことでしょう。助力を請われれば全力でバックアップしたくなるのも分かります。得意分野であるダンスの指導を頼まれたときの表情は良かったですね。きょとんとした「私?」から、脅かすような厳しい表情に切り変わる間に一度緩む、この笑顔が好きです。

千砂都
~てくるし、かのんちゃんっぽさもちゃんとある!

もう一つ好きなのがこれです。

昔からかのんちゃんを知っていないと出てこないセリフですよね。どんな風に歌ってとか、どんな曲が好きでとかをずっと見て聞いてきたから分かることです。全く新しい曲のはずなのに、その中にかのんちゃん特有の、一言では言い表せない微妙な雰囲気を感じ取れるのは、歴史のなせるワザだと思うんです。

ここまでには小さい頃の回想や昔話をしているシーンなど直接的に二人の過去を描写する場面はありませんでした。ですがたった一つのセリフでその積み重ねを感じ取れるものなんですね。幼馴染の歌が大好きで、昔からずっと聞いてきたんだろうなあと。

現実的な娘

もう一つ。千砂都ちゃんってとっても現実的ですね。

生徒会長の懐柔が難しいと知るや、その線はばっさり切り捨てて部を設立せずとも済む方法を模索し始めたり、「スクールアイドル部」に固執するかのんちゃんを不思議がったりしてましたね。

彼女からみて一番大事なのは、かのんちゃんが歌えること。その場所を設けることなのでしょう。やっと歌えるようになった親友をまた曇らせてしまっては大変だからと、最短距離で実を取りに行こうとする娘なんですね。そのために通る見込みの薄そうな正義を投げ捨てられるのは強いと思います。

千砂都
でも二人の実力には合わせないよ
1 位取らなきゃだもんね。覚悟できてる?

ダンスの指導にしてもそうです。

課題が無茶なものだと思いながらも、与えられた二人がやる気な以上、絶対にこなさなくちゃいけないモノとして捉えているんですよね。

いかにして二人をそのレベルに持っていくか。自分のシゴトが何かを把握してすぐに切り替えられるのは素晴らしいです。時間がないのだからチンタラなんてやってられませんもの。

発起人のくせにまさかの体力 0 が発覚した可可にツッコミは入れても、それでシゴトを投げたりはせず、ちょっとでも良い点は評価するあたりもカッコいいなと思います。

少し話は外れますが、ちぃちゃんは可可のやる気・「気持ち」を高く買ってるんじゃないかなと思うんですよね。ゴールから逆算して、可可はかなりの無茶をしなくちゃいけなかったはずです。いくら本人のやる気が高いからってそれだけで伸びるはずがありません。伸びたのは監督役がそのやる気に感化されたからじゃないかなと。

無茶は要求しなくちゃいけないが、本当に無理なことをさせても潰れるだけ。できることと必要になることとのバランスを取って上手に伸ばし、なんとか形にもっていけたのは、情に流されずに目標をきちんと見据えられる現実主義者ならではかな、なんてことを思いました。

結ヶ丘女子高等学校

さて、頑張るくーかー?とそれを支えるちぃちゃん、またそちらのお話とは別に母親との間に何かありそうなことが垣間見える恋ちゃん、それに一人楽しそうに?しているすみれの、未来のメンバー 5 人についてはいいのですが……。前話から気になっていることがあります。

結ヶ丘での「音楽」の扱いってどうなってるんでしょう。

第 1 話、入学式で学園理事長は一部生徒を偏重するような物言いをしていました。恋ちゃんも「音楽科の生徒の邪魔にならないように」と。このエピソードではナナミちゃんだったかな、「下手すると音楽科に目をつけられちゃうよ」ですって。音楽科は特権階級か何かなんですかね。

本音と建前ってものもありますから、生徒の間でそういった意識が存在してもおかしくない*5 とは思います。2 度目の恋ちゃんとの問答でも、ちょっと嫌ぁな感じの共通認識のようなものが再び感じられましたし。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話
わからないのですか?

彼女、自分の好き嫌いベースで話すのはともかくとして、それをごまかすため「ここでは『そういうモノ』だから」的に説明なしで押し切ろうとしてましたものね。うーん?

差別意識は問題ではありますが、でもまあ生徒側はまだマシに思います。突き詰めれば個人々々の感情の話ですし、ファンを増やしていけば済むことですから。厄介なのは学校側でして。

理事長
普通科の生徒が、レベルはどうであれ、音楽に興味を持つのを止める権限はありません
ただし……、音楽はこの学校の大きな誇りです
課題を出します
かのん
その大会に出て 1 位になれば活動を許可するって

興味を持つのは勝手だが、活動は勝手にはさせない、ですか。

恋ちゃんが差別的だったのは「普通科の生徒が質の高いものを出せるはずがない」という決めつけがあったからでした。ここで理事長が言っているのは「もし高ければ活動を認めてあげる」というお情けにすぎません。レベルが高くなければ害悪だという意味においては恋ちゃんの意見と何も変わらない。むしろ物分りのいい風を装っている分、より酷いと言えるのではないでしょうか。

生徒会から理事長の流れは無印やサンシャインでもやった定番ですね。でもこの件があるので今回のお話はちょっと事情が違うんじゃないかと見ています。

あのとき μ's が言われていたのは赤点を回避すること。廃校阻止に必死になるあまり勉強がおろそかになってはいけないからが理由で、教育者が与えるものとして妥当なものだったと思います。条件も最低限ですし。

Aqours は体育館を埋めることでしたか。一定のレベルを示せですね。一見かのんちゃん達と同じに思えますがこちらは前提が違います。Aqours 2 年生組は規定よりも少ない人数で始めようとしていました。*6 その特例を認めさせるには、わざわざ設立条件未達で始めることの意義を示せないといけないでしょう。こちらも妥当と言えます。(代替条件の厳しさには議論の残るところだと思いますが)

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話

翻って結ヶ丘女子高等学校はどうでしょうか。音楽に誇りを持っており、生徒には恥ずかしい活動はさせられない。その方針はご立派ですけれども……。

これから始める学生にいきなり結果を求め、もしダメなら切り捨てとは*7 生徒を伸ばそうとする意思が感じられないのです。低レベルが認められないと言うなら、それをどう引き上げるかを考えるのが学校のあるべき姿じゃないんでしょうか。ある意味、生徒を道具としか見てないような印象を受けました。

廃校の件もあって音ノ木は学校全体で μ's を応援していましたし、Aqours は浦の星だけじゃなく地元の協力まで得ていました。虹学同好会は少し事情が違いますが、あの学校は自由な活動を推奨していたようです。そして学内にはファン兼サポーターをしっかり獲得していました。「学校」で「アイドル(人気商売)」をするなら拠点となる場所の支えは必須だと思うんですよね。

かのんちゃん達がこれから活動を続けていくにあたり、学校のバックアップが得られそうにないのは不安でしかありません。

とりあえずは生徒側に期待かなあ。ダンストレーニングのときには普通科だけでなく、音楽科の生徒も見学していましたね。偏見などもなさそうな雰囲気でしたから、それには胸をなでおろしました。彼女たちのようなファンが増えてくれることを願います。

出典:アニメ「ラブライブ!スーパースター!!」第2話

*1:ヨハネにその気配が見えたくらいでしょうか。その後の(動機方面の)掘り下げがなかったのでよくは分かりませんが。

*2:決してそれが悪いわけではなく、むしろ良い面だと私は考えます。

*3:仲が良くても二人は独立していて、今までは一緒に何かに打ち込むことがなかったからかでしょうか。やりたいことが基本的に別々だから、自分の好きを相手に勧めるのは押し付けになると考えたのかな。

*4:後天的に獲得した性質っぽいですね。

*5:それでも新設校で既にその意識があることに疑問は残りますね。あるとするなら前身の神宮音楽学校の名残でしょうか。

*6:結ヶ丘では人数の話が出ていなかったように思うのですが、少人数でも創部可能なんでしょうか。

*7:理事長のセリフが「課題を出します」までで、それに納得して退室するシーンを描かないのがストーリー構成上ずるいと思います。お話のテンポはいいんですけどね。もう条件を飲んだことになってしまっていますけれども、二人は本当に納得してるんでしょうか。